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徐々に効いてくる「10番」の重圧。
本田圭佑よ、フリーキックを譲れ! 

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細江克弥

細江克弥Katsuya Hosoe

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photograph byGetty Images

posted2014/01/26 08:15

徐々に効いてくる「10番」の重圧。本田圭佑よ、フリーキックを譲れ!<Number Web> photograph by Getty Images

本拠地サンシーロでのデビュー戦で、ゴールからやや左寄りの位置のFKでも、本田はキッカーを譲らなかった。

しかし本田は、自ら希望して10番を手にした。

 しかし本田は、憧れの10番を自ら希望することで手にした。

「皆さんに逆に質問したいのは、10番をつけるチャンスが目の前にあって違う番号を選びますか?」

 迷いなくミランの10番を希望するそのメンタリティー。しかしそれこそが、彼がミランにまでたどり着いた理由である。サッカー選手としての野心と自己顕示欲。それを実現する手段として、自分で自分の背中を強く押す気概。大胆さと冷静さのバランスがとにかくいい。

 ミランも、そんな新10番の誕生を歓迎した。

 とはいえ、ミランの10番を背負うプレッシャーは、おそらくこちらの想像よりはるかに大きい。

 バロテッリが愛想よく「本田はミランの背番号10にふさわしい」とコメントすれば、ピッチで何一つ結果を残していなくても騒がれる。もちろんピッチで結果を残すほど期待は高まり、プレッシャーは過度に増幅する。では、結果が出なければどうなるか。

結果が出なかったら起こる、最悪の事態とは?

 最も典型的な現象は、ピッチ上におけるパワーバランスの崩れである。そうした意味で少し気になるのが、プレースキックだ。

 本田は当然のように、ミランでもプレースキックのキッカーという大役を強奪した。しかしセットプレーは重要な得点源であるから、それを本田に任せて質と結果が伴わなければチームメートも黙っていない。現時点でカップ戦のスペツィア戦とウディネーゼ戦、リーグ戦のサッスオーロ戦とベローナ戦の4試合をこなしているが、プレースキックの精度はいずれも低く、ボールやピッチに対するフィーリングが万全でないことが伝わってくる。1カ月も実戦から離れていたのだから当然のことだ。

 ロビーニョもバロテッリもメクセスも、本田と同様に“蹴りたがる”タイプだ。プレースキックにおける“新10番”への期待感と信頼感が薄れれば、彼らも自己主張してボールをセットするだろう。そうなると、新10番を中心とするピッチ内のパワーバランスは崩れる。

【次ページ】 しばらくはプレースキッカーを控えてもいいのではないか。

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