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上原の「息子と練習」、日本では無理?
“仕事と家族”にまつわる日米格差。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2013/11/21 10:30
ワールドシリーズ第6戦の試合前のウォーミングアップ中、外野で球拾いをしながら談笑する上原浩治投手と長男の一真くん。そして、デビッド・オルティス選手の息子、ディアンジェロ・オルティスくん。
球場内の控え室、自宅通勤、会見に同席。
例えば父の日には、試合前の練習は休みにして、グラウンドで選手と子どもたちが一緒に遊べる時間をつくっているし、自分の知る限りほぼすべてのチームが遠征のどこかで“ファミリー・デー”を設け、家族同伴で遠征できるようにしている。もちろん移動はチャーター機で一緒だし、ホテルも一緒に宿泊できるのだ。
またシーズン中も家族と生活をともにする選手(メジャーの場合移籍も多く、さらにチームが全国に広がっているため、シーズン中は家族と離れて暮らす選手も少なくない)のために、球場内には家族控え室も用意されており、そこで試合を終えた選手たちを待ち、試合後は一緒に帰宅することもできる。
一方、シーズン中は家族と離れて暮らす選手についても、自宅のある遠征先ではチームとともにホテルに宿泊する必要はなく、自宅通勤が許可されている。
ボルティモアに自宅がある上原も、シーズン中、ボルティモア遠征の際には自宅から球場入りし、その時も一真くんは常に一緒だった。
さらには今シーズン途中でレッドソックスと契約延長を結んだダスティン・ペドロイア選手は、チーム主催の公式記者会見で父親や妻子を伴い出席。そして以下のように家族を敬う発言を忘れることはなかった。
「自分のような選手がこのような契約を結ぶことができたのも家族のサポートがあったお陰だ。家族には心から感謝している」
川崎と青木の家族が受けた出産サポートとは?
もう一つ付け加えておこう。
これも今シーズンの出来事として話題になったが、川崎宗則選手と青木宣親選手が奥さんの出産に付き添うため、メジャーで最近適用された“父親リスト”と呼ばれる産休制度を利用して最長で3日間出場枠から外れていた。
これもメジャーが選手のプライベートな部分を尊重しているからこそ誕生した規則といえる。
なぜメジャーにこのような環境が整っているのかといえば、メジャー全体が選手を裏で支えている彼らの家族の存在を重要視しているからに他ならない。
だがこれは単にメジャーだけの特異な環境というわけではなく、他のスポーツでも日常的に行なわれていることだ。つまりは米国の文化がもたらした風習といった方が正しいのかもしれない。