ロングトレイル奮踏記BACK NUMBER
下痢と腹痛に悩まされながら、
自らの足でオレゴンへ辿り着く。
text by
井手裕介Yusuke Ide
photograph byYusuke Ide
posted2013/10/17 06:00
長かったカリフォルニアを抜け、オレゴンに達した井手くん。
「それは彼女の運転次第さ」
ストアの店主に相談をすると、ちょうど彼の奥さんがこれから隣町に行くという。戻りのアシもあるし病院で診てもらったらどうかと、助け舟を出される。
保険が効くのか不安になりつつも、お願いすることにした。
腹具合が気になり尋ねる。
「町までどのくらいかかりますか」
「それは彼女の運転次第さ」
「!?」
ジャニス・ジョプリンみたいな奥さんは、ハイウェイを猛スピードで駆け抜ける。あっという間にYrekaという町に着いた。
僕の為に急いでくれたのか、それともこれが彼女のいつものペースなのか。赤ちゃん言葉で膝に乗せたチワワに話しかける。笑顔とスピードのギャップがすごい。
診断は、バックパッカーにはお馴染みのジアルジア。
保険が効くクリニックに行くと、“Giardia”と診断された。この病気は、川の水を飲むバックパッカーにはお馴染みだ。もちろん、僕も浄水にはかなり気を使っていただけに、ショックは大きい。
最低1週間は薬を飲んで安静にしなさいと言われる。
オレゴンまでは2日でたどり着く。よりによってどうしてこのタイミングで、と悔やむ。
Yrecaの町にある大きなスーパーで食糧を買い、キャンプ場へ戻った。実はこの時には、翌日にトレイルに戻る予定だったのだ。
ジャニス・ジョプリンは帰り道も絶好調に飛ばす。チワワはこぼれそうな瞳で助手席に座る僕を見つめる。昔のサラ金CMを思い出す。
「どうする。どうするよ。俺」
違う、それはオダギリジョーのカード会社のCMだ。