ロングトレイル奮踏記BACK NUMBER
下痢と腹痛に悩まされながら、
自らの足でオレゴンへ辿り着く。
text by
井手裕介Yusuke Ide
photograph byYusuke Ide
posted2013/10/17 06:00
長かったカリフォルニアを抜け、オレゴンに達した井手くん。
僕は本当にトレイルに戻れるのだろうか。
予想以上に腹の不調は続いた。毎朝の下痢、そしてチクチクと腹を刺すような痛み。
何日も滞在していると、なんとなく居心地の悪さを感じてしまう。Sunshineは以前泊めたバックパッカーのことを話し、間接的に僕を牽制したり皮肉を言ってくる。
もちろん、タダで泊めてもらっているので何も文句を言う筋合いはない。嫌ならお金を払って、モーテルに泊まればいいのだから。
Yrekaのクリニックで言われた1週間を過ぎても調子がよくならなかった僕は、Ashlandの医者に再度診てもらい、薬を足してもらう。
もう少し様子を見るように言われる。
さすがに1週間ほど山から離れていると、緊張の糸が緩むのか、はたまた心が折れてしまったのか、一気に身体を怠さが襲う。
毎日大学の図書館に行って本を読んだりしているだけなのに、疲れと眠さが酷い。僕は本当にトレイルに戻れるのだろうか。不安に押しつぶされそうになった。
トレイル歩きは人を適性体重にする?
そんな風にSunshineの家から図書館へ逃避する日々を過ごしていると、日本人バックパッカーのGOKUさんが町に着いた。
およそ3カ月ぶりの再会だ。話し相手もおらず、心が折れかけていたので、本当に嬉しい。
以前より随分と痩せている。20キロは痩せたと言うので、驚いてしまう。僕はというと、何故だか6キロも体重が増えているというのに。トレイル歩きは人を適正体重にするのだろうか。
GOKUさんから、周りのバックパッカーの情報を聞く。日本人のTOYOさんは親族の結婚式が9月の末に控えているということで、トレイルをヒッチハイクでスキップしながら前へ進んでいるようだ。
いつも彼女とチャットや文通をしていた19歳のSourcreamはリタイヤしてしまったらしいし、いつか共にマクドナルドを目標に歩いたScorn、Doodleの女の子2人組は、山火事を理由に随分先へスキップしてしまった。
昔の友人と会えるかもしれないと思っていただけに、なんだかショックだ。
それでも、GOKUさんに日本語で思いっきり自分の今の気持ちを聞いてもらうと、いくらか晴れてくるものがあった。体調も、いつの間にかすっかり良くなった。
約2週間の停滞を経て、僕はカリフォルニア側に戻ることを試みるが、かなりの距離なので、ヒッチハイクは現実的でない。日本のようにバスや電車などの交通網が張り巡らされているわけではないのだ。