ロングトレイル奮踏記BACK NUMBER

下痢と腹痛に悩まされながら、
自らの足でオレゴンへ辿り着く。 

text by

井手裕介

井手裕介Yusuke Ide

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photograph byYusuke Ide

posted2013/10/17 06:00

下痢と腹痛に悩まされながら、自らの足でオレゴンへ辿り着く。<Number Web> photograph by Yusuke Ide

長かったカリフォルニアを抜け、オレゴンに達した井手くん。

ラフティングのツアーに潜り込むつもりが……。

 元々、ラフティング会社のツアーに潜り込むことで、僕が戻りたい地点の近くに降ろしてもらうことになっていた。

 出発前日の夜、家に帰るとSunshineはおらず、いつものように彼女の友人たちが大音量でビデオを見ていた。Sunshineはどこかと聞くと“Three Doors Down”という、ロックバンドのライブを見に行っていると言う。

 電話は出来ないよ、と1人の女性が僕を制すように言い、さらに続ける。

「どうしてカリフォルニア側に戻るの。カナダに辿り着きたいのなら、急がないと雪が降ってトレイルが閉まってしまうわ」

 それはよくわかっている。ただ、僕は旅の過程を大切にしたい。所詮自己満足の旅なのだから、自分が納得いく形で進みたいのだ。

 彼女に説明するも、まったく分かってもらえないばかりか、愚かだなんだとただの悪口を言われる始末。嫌な予感がし、尋ねる。

「もしかして、ラフティング会社のツアーが中止になったの?」

 彼女は露骨に口ごもりつつ、知らないと言う。とにかくSunshineは今夜遅くに帰ってくる。明日の朝にラフティング会社の事務所まで送ってくれる約束だ。

 僕はミュージックビデオの騒音に耐えつつ、目を閉じたのだった。

 そして迎えた待望の出発当日の朝、Sunshineが眠そうに目をこすりながら、ラフティングのツアーがキャンセルになってしまったと言う。なんてことだろう。

 Sunshineは続ける。

「とにかくそれだけよ。昨日のライブで、はしゃぎ過ぎて寝不足なの。私はこれからまた眠るからね」

絶望感に、眠かった目が冴えてくる。

 

 絶望感に、眠かった目が冴えてくる。彼女を叩き起こすわけにもいかず、Gokuさんの泊まっているモーテルへ。

 僕はGOKUさんに相談がてら愚痴を聞いてもらう。

 値段が割に合わないので、最近はレストランで食事をしないのだと言う僕に、彼は町の人気レストランでのブレックファーストを奢ってくれた。

 2時間ほどアテになりそうな場所を調べたり電話したりして過ごしたが、どうもパッとしない。そろそろSunshineも起きただろうと思い、駄目元で彼女にもう一度アタックしようと決める。

 GOKUさんのアドバイスで、お金を払う意思を見せることに決めた。一週間もタダで泊めてもらったのだ。当然、払うものは払うべきだろう。

 家に帰り、僕は手を合わせて彼女に頼む。提示された値段は以前彼女がほのめかしたものより上がっていたが法外ではない。

 僕は感謝して車に荷物を詰める。トレイルへ戻れるのだ。

【次ページ】 テントで眠ることができる喜び。

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