ロングトレイル奮踏記BACK NUMBER
下痢と腹痛に悩まされながら、
自らの足でオレゴンへ辿り着く。
text by
井手裕介Yusuke Ide
photograph byYusuke Ide
posted2013/10/17 06:00
長かったカリフォルニアを抜け、オレゴンに達した井手くん。
テントで眠ることができる喜び。
Seiad Valleyというカリフォルニア側のRVキャンプ場に着く。
僕がここを離れる前に20人ほどいたバックパッカーは3人だけに減っていたが、いつかのパンケーキチャレンジに挑戦しているバックパッカーを見ることができた。
彼によると、この辺りを歩いていたバックパッカーたちは、なんやかんや言い訳をつけてトレイルをスキップしているようだ。
カフェのおばちゃんは笑顔で僕の肩を叩く。
「よく戻ってきたわね。あんた、やるじゃないの」
僕は休み過ぎで重い身体に鞭を打つ。
「お前が本当に戻りたかった場所に戻ってこれたんだぞ」
初日は15マイルほどしか歩けなかった。以前歩いていた1日の距離の半分だ。それでも、誰かのベッドで眠るのとは違う充実感を抱き、久しぶりにテントで眠ることが出来た。
翌日、僕はとうとう自分の力でカリフォルニアを抜けることができた。
いや「自分の力」なんて表現はおこがましい。沢山の人の支えがあって「自分の足で」最初の州境を越えることが出来たのだ。
終わり良ければすべて良し。これはシェイクスピアの残した、最も有名な言葉だ。
いや、これは終わりではないか。これから、オレゴンでの移動生活が始まるのだから。
オレゴン州に入ったことを示す看板。心も躍る。