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松井秀喜とラミレスの言葉で考える、
55本塁打と、敬遠と、“日本人”。 

text by

中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byHideki Sugiyama

posted2013/08/28 12:45

松井秀喜とラミレスの言葉で考える、55本塁打と、敬遠と、“日本人”。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

8月22日に球団新記録のシーズン45本塁打を放ったバレンティンはその後もペースが落ちず、8月27日にプロ野球史上最速となる111試合目での50本塁打を記録した。

もうひとり、「しょうがない」と語っていた日本人選手。

 もうひとり「しょうがない」と語っていた選手を思い出す。松井秀喜だ。松井は巨人時代、自分と本塁打王を争っているライバルを味方の投手が敬遠するのを外野から眺めながら「勝負しろよ」と思っていたという。

「日本のプロ野球がああいう歴史をつくってしまった。だから、しょうがないんですけど、僕は納得してなかったですよ。個人にタイトルを取らせるためにああいうことをするのは。野球はそういうスポーツではない」

 でも松井も言わなかった。いや、言えなかったのだ。自分のためにやってくれているというのもある。そして、そうまでしてもタイトルが欲しいという思いがまったくなかったと言えば嘘になるだろう。

「ショウガナイ」を解消する確実な方法。

 ラミレスや松井の話を聞き、こうした慣習が日本球界から消えることは未来永劫ないのではないかと思った。

 ただし、ラミレスが語った2つ目の「ショウガナイ」を解消する方法は確実にひとつある。誰かが記録を塗り替えればいいのだ。

 27日、バレンティンが2本塁打し50本の大台に乗せた。残りは33試合。このままのペースでいけば悠々55本をクリアしそうな気配だ。

 大事なのは「悠々」超えることだ。バースも、ローズも、カブレラも、残り数試合まで記録達成を引っ張った。そこで対戦した「関係者球団」は半ば、やらざるをえなくなってしまったのだ。日本人の総意として――。

 セ・リーグの中で「関係者球団」と言えるのは巨人だけだ。だが残り十数試合もあるのにさすがに敬遠はできまい。

 とにかく一気に抜き去ることだ。そうすれば、日本人の総意という見えない壁は崩壊する。

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