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復帰直後のガンバでゴールを量産中。
宇佐美貴史の伝説が再び動き出す。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byDaiju Kitamura/AFLO
posted2013/08/10 08:02
かつて「天才」の称号はこの男のためにあった。宇佐美貴史は失意の時期を越えて、古巣・G大阪で目覚しいパフォーマンスを見せている。まだ21歳、宇佐美のキャリアは始まったばかりだ。
3試合で6点取っても満足することはない。
宇佐美を中心とする攻撃の破壊力は岡山戦でも遺憾なく披露されたが、初めて経験するJ2の舞台は思った以上にハードだと感じているようだ。
「神戸、ヴェルディはJ1経験があるチームなんでなんとなく分かるんです。岡山はある意味、初めてJ2のチームとの対戦だったんですけど、難しいなって思いましたね。満員のスタジアムは異様な雰囲気やし、それが相手のモチベーションになっている。普段の2倍以上の力が出ている感じがするんで、そういう相手に勝つのは簡単じゃない。アウェイは、これからも難しいなって思いますけど、俺もガンバもここ(J2)で勝って満足することはない。J2での戦いの難しさを経験して、成長して、J1で優勝出来るチ-ムになるのが目標なんでね」
宇佐美の戦いはまだ始まったばかりだが、その存在感は日増しに大きくなっている。
出場した3試合は2勝1分け。3試合3得点と結果も出ている。
「結果は悪くないと思います。でもまだまだチャンスはたくさんありましたからね。3試合で3点取りにガンバに戻ってきたわけじゃないし、仮に3試合で6点取っても満足することはない。もっともっと点を取りたいですね。目標は二桁のゴール数ですけど、それを達成しても満足はしないでしょ。自分のプレーが出来て、結果が出て、それに満足してしまうと痛い目に合うんでね。だから、これからもめっちゃくちゃ貪欲に、求めすぎるぐらい(ゴールを)求めていきたいと思います」
東アジアカップは見ていない。でも代表は諦めていない。
恐ろしいぐらいに貪欲だが、宇佐美には、J2での活躍の先に求めているものがあるようだ。
7月、韓国では東アジアカップが行なわれていた。宇佐美が共に戦ったロンドン五輪代表ら若い選手を中心に日本代表が構成され、優勝を果たした。
「東アジアは見てないです。でも、ガンバで結果を出せば、代表にも繋がるし、来年のブラジルW杯の可能性も出てくる。開幕から点取りまくったら、どうなるか分からないじゃないですか。自分はまだ諦めてないんで、可能性がある限り、チャレンジしますよ」
日本代表への復帰。それも今の宇佐美の大きなモチベーションのひとつなのだ。
だが、その前に課題の克服も重要なミッションになる。
試合中にも調子の波があり、ガンバの大黒柱・遠藤ほどの存在感と安定感は、まだない。その波をなくし、結果を出し続け、チームをJ2優勝、J1復帰に導き、来シーズン、ゴールを決め続けたら……。ブラジルW杯のメンバーに入る可能性はないとは言えない。
まだ、21歳。新たな宇佐美伝説を刻むための時間と試合は十分に残っている。