昔とは異なる落ち着き、フィジカル、そして精神状態。

　だが、ブンデスリーガでの辛苦の時間は、宇佐美に多くの財産を残してくれたようだ。

　神戸戦から岡山戦まで3試合、際立っていたのは「仕掛け」と「決定力」だ。ボールを持ち、ちょっとでもスペースがあると得意のドリブルで仕掛けてゴールを目指す。フィニッシュも「ここぞという時の落ち着きは、2年前とは違う」と自身が語るように、余裕が見て取れる。それが決定力を高めている。

　ボディバランスの良さも目立つ。2年前は相手に強く当たられると簡単に転がされ、バイエルンでもフィジカルの弱さを指摘された。だが、今は当たられて、体勢が崩れかけても倒れない。「全体的に体が大きくなった」というように、薄かった上半身は厚くなり、フィジカルにも自信がついたようだ。相手が激しく寄せて来ても慌てず、簡単にはボールを取られなくなった。

　また、メンタルの変化も見逃せない。チームメイトをフォローする姿勢が度々見られるのだ。宇佐美と同時期に移籍してきたブラジル人のロチャは、日本語が分からないが、ドイツでのプレー経験があるので、ドイツ語は理解できる。そのため、宇佐美は「ドイツ語で守備の仕方とかポジショニングを説明したり、疲れた時はお互いを鼓舞したりしている」と、自ら積極的にコミュニケーションを取る役割を果たしている。

「2年前は、みんなに付いていくのが精一杯で、余裕がなかった。自分はやれると気負ってばかりいた。でも、今はいろんな意味で余裕があるし、チームを自分が引っ張るというメンタルでプレーしています」

大森晃太郎、ロチャという相棒とも既に意気投合。

　そうした個人の成長に加え、他選手とのコンビネーションの良さも宇佐美を輝かせているひとつの要因だ。とりわけ、大森晃太郎との相性は抜群である。岡山戦では、この二人のコンビネーションから多くのチャンスを生み出していた。

「晃太郎とは、ジュニアユースからの長い付き合いなんで、彼のしたいことは手に取るように分かるし、逆に自分のしたいことも理解してくれている。試合前は、よくお互い近くでボールを動かしてリズムを作ろうという話をしていますね。岡山戦のゴールは彼からいいタイミングでボールが来たし、ロチャが決めた2点目は俺と晃太郎で崩してカウンターから決まった。二人のコンビネーションはすごくいいと思っています。

　ロチャともいい関係でプレー出来ている。彼は、ボックス内で勝負するフィニッシャータイプ。ゴールへの嗅覚とか、点の取れるポジションをよく分かっているんで、俺が彼の後にいて、うまくお膳立てする感じです」

　現在はロチャと2トップを組んでいるが、宇佐美は大森や加地亮がいる右サイドに流れることが多く、そこが今、ガンバの攻撃の起点になっている。

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