プロ野球亭日乗BACK NUMBER
プロの洗礼に苦しむ巨人・菅野智之。
「いい投手」から「凄い投手」への道。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2013/07/20 08:02
「いいところを狙いすぎてカウントを苦しくしてました……そこで甘くなったところを打たれる典型的なパターン」と16日の阪神戦後に語った菅野。自己分析も客観的にできているのだが……。
厳しい口調だった。
「テクニックに走るというか、小技で何とかしようとする。もう少し力投派というか、力で押す気持ちで相手打者に向かっていかないとね。もっと大きくなれるはずなんだから」
7月16日の阪神戦でプロ最短の4回KOを食らった菅野智之投手のことを聞くと、巨人・原辰徳監督はこう言って何度も首を振った。
開幕から順調に勝ち星を伸ばしてきた菅野が、勝てなくなっている。
6月15日のソフトバンク戦で7勝目を挙げてから前半戦が終わるまでの1カ月で4度先発して白星は1つだけ。しかも7月2日の阪神戦では5回3分の2、そして16日の試合でもリベンジどころか返り討ちにあってしまった。
「プロの世界はそうは甘くないということですよ」
原監督は言う。
「クセだとか、配球だとか、もちろんこっちも研究しているけど、相手も同じように研究してくる。そういう部分は常に追いかけっこなんです。だからトモユキも常に自分の持っている100の力を出せなければ、そうは簡単に勝たせてはもらえない。でも、それと同時に、次の登板ではその持っている100をどれだけ大きくできるか。だから今はもっと速球派というものを意識して、そういう部分でマウンドに上がるべきなんです」
菅野本人はスピードよりもコントロールを追求してきた。
菅野は大学時代に神宮球場で行なわれた世界大学選手権で自己最速の157キロをマークしている。その頃は豪腕のイメージで語られていたが、本人的にはずっと制球を意識してマウンドに上がっていたのだという。
「ストレートが全てのピッチングの基本です。だから速い球を投げられるにこしたことはない。でも、すべて160キロ投げられるわけじゃないですから。それよりもやっぱり自分のイメージ通りにいかにピッチングを組み立てて、そこにボールを投げられるか。ピッチャーにとって1番大切なのはコントロールだと思います」
以前にこのコラムでスピードガンと勝負しない投手として、この本人の意識については書いたことがある。
そこが1年目からいきなりプロの世界で勝ててきた理由であるし、前半戦で8勝という数字が正しさを証明もしている。