プロ野球亭日乗BACK NUMBER
プロの洗礼に苦しむ巨人・菅野智之。
「いい投手」から「凄い投手」への道。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2013/07/20 08:02
「いいところを狙いすぎてカウントを苦しくしてました……そこで甘くなったところを打たれる典型的なパターン」と16日の阪神戦後に語った菅野。自己分析も客観的にできているのだが……。
生来の器用さが壁をぶち破る妨げになっている!?
ただ、である。
原監督の言うように「プロの世界は甘くない」。必ず乗り越えなければならない壁にぶつかり、そのときには今までと同じやり方ではなかなか己の殻を破り、壁を突き抜けることはできないのかもしれない。
菅野がいま問われているのはそこであり、だから伯父であり、チームの指揮官である原監督は、あえて違う方向性を求めているのだろう。
器用さが殻を破る邪魔になっている。
菅野が大学時代のリーグ戦の最中にちょっとしたスランプに襲われたことがあった。
どうしても真っすぐがシュート回転してしまう。そのとき恩師の東海大・横井人輝監督がリリースの修正のために翌週の月曜日にカットボールを投げる練習をさせた。1日、2日すると狙い通りに真っすぐはきれいなフォーシーム回転を取り戻したが、さらにこのとき初めて投げたカットボールを「試合で使える」と本格的に練習を始めて、週末に行なわれた次の試合では実戦球にしてしまった。
これからの課題は「いかに今の100を大きくできるか」。
「覚えようと思って覚えられなかった球種はないです」
菅野は言う。
そうしてカーブもワンシームも自分のピッチングの幅を広げていくために習得し、それが武器となっていった。
菅野の凄いところは、単に投げるのではなく、それをきちっと制球して使えるボールに出来ることだった。
アマチュア時代はそうして制球に磨きをかけ、球種を増やして殻を破り、壁を乗り越えてきた。ただ、プロの世界では壁にぶつかったときに、同じ枠の中では殻は破れない。全体のスケールアップ、いわば今まで2500ccのエンジンだったものを、いかに3000cc、4000ccへとボアアップしていけるか。それが原監督の言う「いかに今の100を大きくできるか」であり、菅野の課題だということだった。