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“知将”城福浩監督がついに解任。
FC東京が抱えた4つの誤算とは?
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byMami Yamada
posted2010/09/25 08:00
FC東京の大黒と、ヴィッセル神戸の宮本。両チームともに9月に監督が解任された
9月19日、FC東京の城福浩監督が解任された。
昨季ナビスコカップで優勝するなど、城福監督は多くのものをFC東京にもたらしてきたが、23節の磐田戦まで9試合勝利がなく、降格圏内の16位に転落してしまったことを考えると、仕方がない決定だったと言えるだろう。同じく今シーズン途中に監督が交代した、京都(17位)、神戸(15位)、大宮(14位)と残留をかけて争うことになる。
かつてレバークーゼンを率いたドイツ人のアウゲンタラーが「人は生まれたときから死が決まっているように、監督はサインした瞬間から解任へのカウントダウンが始まっている」と言ったように、監督はいつかはクラブを去るもの。監督交代は、ある意味、サッカー業界のなかでの配置転換のようなものだ。攻撃サッカーの確かなメソッドを持つ城福監督が、また他の場所で力を発揮することを期待したい。
それにしても、なぜ代表級の選手が集まるFC東京が、今季は急失速してしまったのだろう。筆者は4つの誤算があったと考えている。
1つ目の誤算は、「最少失点チーム」という目標設定だ。
選手には重すぎた「最少失点チーム」という言葉。
城福監督は開幕戦で横浜F・マリノスに勝った試合後、こう語った。
「今季、僕が一番大事にしているのは、うまくいかないときにいかにチームが崩れないかということ。選手にもJリーグ最少失点チームを目指すと言っています」
「ムービングフットボール」というキャッチフレーズからもわかるように、城福監督は攻撃サッカーを志向する指揮官だ。ただし、選手たちの意識が攻撃ばかりにいってしまうと、どうしても失点が増えてしまう。そこで攻守のバランスを微修正するために、城福監督は「最少失点チーム」という極端な言い方をしたのだ。攻撃的なコンセプトを変えたわけではない。
だが、選手たちにとっては、想像以上に「最少失点」という言葉が重くのしかかったのだろう。昨季に比べてリスクを冒す姿勢が減り、自慢のパスまわしは影を潜めてしまった。日本代表の岡田武史前監督が「選手が指示に左右されすぎる」ことに悩み続けたように、日本のチームでは「言葉選び」が命取りになることがある。結果論になってしまうが、もっと別の表現を使っていれば、攻撃サッカーが迷走することはなかったかもしれない。
2つ目と3つ目の誤算は、選手に関することだ。