Jリーグ観察記BACK NUMBER
“知将”城福浩監督がついに解任。
FC東京が抱えた4つの誤算とは?
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byMami Yamada
posted2010/09/25 08:00
FC東京の大黒と、ヴィッセル神戸の宮本。両チームともに9月に監督が解任された
選手の故障離脱やファール癖など難題もあったが……。
まず痛かったのが、開幕前にボランチの米本拓司が負傷離脱したこと。米本は昨季、高卒ルーキーながらレギュラーに定着し、今年1月には日本代表にも選ばれた。ボール奪取に優れ、縦パスのセンスもある。チームに彼の代わりとなれる選手はおらず、最後までボランチが穴になり続けた。
また、大分から加入したDFの森重真人の「ファール癖」も誤算だった。
2節の浦和戦で相手を倒してPKを与えてしまったのを皮切りに、13節の神戸戦ではロスタイムにハンドを犯してPKを献上。これで同点に追いつかれてしまった。また、22節の浦和戦でも、再びファールで相手にPKを与えた。森重からしたら、チームとしての守備が機能しておらず、自分にしわ寄せがきたと感じているかもしれないが、彼が原因で多くの勝ち点を失ったのは事実である。
ただし、チームの成績に最も影響を及ぼした「最大の誤算」は、別の部分にあったと筆者は考えている。それは、フロントの消極的なチーム運営だ。
カボレ、長友が移籍した時になぜ補強をしなかったのか?
昨年9月、FWのカボレを中東のアル・アラビに売却したとき、FC東京は高額の移籍金を手にした。だが、村林裕社長はその資金を新たな選手獲得には使わず、カボレを獲得するときに借り入れたローンを完済するために使ってしまった。ローンを少しずつ返済しながら、売却金を次なる投資にまわすという手もあったはずだ。また、2010年W杯後にサイドバックの長友佑都がイタリアのチェゼーナに移籍したが、その代役となる選手を獲得しなかった。当時すでにチームは、スランプに苦しんでいたというのに。こういう「守りの経営」では、チーム力を維持できるはずがない。
チーム低迷の責任は、監督だけでなく、フロントにもある。クオリティーの高い選手には金がかかる――。それを理解しないかぎり、FC東京は本当の意味での「首都のクラブ」にはなれないだろう。