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71名死亡の飛行機事故から4年…シャペコエンセが2部優勝で昇格 メディアも全員泣いた合同葬での“愛”の記憶
posted2021/02/02 06:00
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Getty Images
1部復帰は、すでに決めていた。しかし、選手たちは4年あまり前の犠牲者たち、そして昨年末に急死した前会長のためにも、どうしてもタイトルが欲しかった。
1月29日夜に行なわれたブラジル2部最終節。シャペコエンセは90分を終えて2-1でリードしていたが、優勝するにはあと1点必要だった。首位のアメリカMGが勝ち点、勝利数、得失点差で並び、得点数で優っていたからである。
昨年の3月以降、ブラジルではすべての試合が無観客で行なわれている。しかし、スタジアムに隣接する高層アパートの各階のベランダに数十人のファンが集まり、必死に声援を送る。
終了間際のPKで逆転優勝をつかみ取った
選手たちはがむしゃらにゴールを目指し、アディショナルタイムにPKを獲得。緊迫した雰囲気の中、CFアンセウモ・ラモンが右へ飛ぶGKをあざ笑うように、パネンカ・キック(ボールの下に足を入れて浮かせて蹴る。チップキック)を決める。息を殺して見守っていたファンの歓声が、選手たちの頭上に降り注いだ。
試合後、2016年末の飛行機事故で奇跡的に生き残った3選手の1人である左SBアラン・ルシェウは「クラブの歴史に名前を刻むことができた」と顔を上気させた。
もう1人の生き残りで、現在、クラブのスーパーバイザーを務める元CBネットは「このタイトルを事故の犠牲者とその家族、そして前会長に捧げる」と語った。そして「新型コロナウイルスの蔓延が早く終息し、来季、超満員の観衆の前で1部で戦えたら……」と願っていた。