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“ホームラン・アーチスト”中田翔。
劇的に進化した新打法を検証する!
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byTamon Matsuzono
posted2010/08/10 12:00
内川聖一も鉄平も、つまった打球を認めて成長した!
球界を代表するふたりの打者が、そのことについて説明してくれたことがある。
「首位打者になる前年までは、泳がされてもバットに当てることが長所だと思っていたんですが、それをコーチから『一番脆い形だ』と言われてから、つまらされてもボールを呼び込んで打つ意識に切り替わりました」
そう話す横浜の内川聖一は、つまることと向き合ったことで、'08年に右打者最高打率をマークし、首位打者に輝いた。
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楽天の鉄平も、つまる打球を認めた打者のひとりだった。
「バッターって、できることなら打球がつまることを避けたいものなんです。でも、どうしてもそうなってしまう打席はあるわけで。ならば、それを受け入れることでバッティングに幅が生まれるんじゃないかと」
彼もまた、不利な打撃を逆に利用したことで、'09年に首位打者となった。
手元までボールを引き付けて打つ今のフォームは、体が泳がされて打つことが多かった以前よりも、つまることが多くなるかもしれない。しかし、それを受け入れた上でバットをしっかりと振り抜きさえすれば、天性のパワーとスイングスピードを兼ね備える中田だけに、内野の頭など軽々と越えられる。
実際、その形ができているからこそ、故障で戦線を離脱するまでの打率が1割9分5厘(41打数8安打)に対し、復帰後の打率が3割7分2厘(43打数16安打。8月8日現在)と、数字にも成果が表れているわけだ。
エース級をことごとく打ち崩し、新人王奪取なるか!?
オリックス・金子千尋、西武・涌井秀章、ソフトバンク・和田毅、そして田中と、相手チームのエース格をことごとく打ち崩していることから、周囲は「中田は本物だ」と、ようやく実力を認めた節がある。
今のところパ・リーグには、絶対的な新人王の有力候補がいない。だからこそ、同タイトルの資格を持つ中田だけに、もしかしたら……と期待をしてみたくもなる。
世代を代表するアーチストだけに、せめてそれくらいの実績は残してほしいものだ。プロ野球の未来のためにも。