スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
エース依存はバルサだけじゃない!?
C・ロナウドが背負う「デシマ」という夢。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byREUTERS/AFLO
posted2013/04/17 10:30
ガラタサライと対戦したCL準々決勝の第2レグで、先制点を決めたロナウド。
マンUのファーガソン監督も「世界最高の選手」と絶賛。
中でも4季連続得点王のメッシに3点差をつけ得点ランク首位をひた走るCLでは、マンチェスター・ユナイテッド、ガラタサライ相手に4戦連続で計5発と、決勝トーナメントの全試合で決定的なゴールを決めている。
ゴールだけではない。
総枠内シュート数49本、被ファウル数24は共に大会最多で、出場10試合で積み重ねた走行距離はチーム最長の10万1426mに上る。またホームのマンチェスター・ユナイテッド戦でヘディングシュートを決めた際の驚異的な跳躍は、最高到達地点が2m93cmに至ったとの調査結果もTV番組で報じられた。
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これらの数字が示す彼のフィジカルコンディションの充実ぶりは、恐らくキャリア最高と言えるレベルにある。
「表現のしようがない、信じられないゴールを決めてくれた。彼は今すばらしい状態にある。本人が望めば世界最高の選手になれるだろう。もしくは、既になっている」
先述のヘディングシュートを決めたマンU戦後、敵将であり元恩師でもあるアレックス・ファーガソン監督は脱帽した様子でそう言っていた。
モウリーニョ監督とクラブへの不信感はいまだ消えず。
「メッシは史上最高の選手だが、クリスティアーノは今すばらしい状態にある。得点王は彼じゃないかな」
4月12日、スイスのニヨンで行われた準決勝の組み合わせ抽選会でドローを担当したルート・ファンニステルローイの、こんな意見に同意した識者は少なくなかった。
繰り返すが、今もレアル・マドリーは盤石の状態にはない。プレー面の問題に加え、モウリーニョ監督と選手達の関係は修復不可能な状態となって久しく、CL制覇という共通の目標によって一つの方向を向いているにすぎないのが現実だ。
クリスティアーノ自身も、昨年9月のグラナダ戦後に発した「悲しいからゴールを喜べなかった」との発言を機に明るみに出たクラブへの不満は拭えていない。
「今はもう、自分は幸せな選手だと宣言できるのでは?」
あれから半年以上が過ぎた3月半ば、マルカ紙が主催した昨季のリーガ最優秀賞の受賞式にて司会者からそう問われた彼は、フロレンティーノ・ペレス会長が目の前で見守る中、笑顔のまま無言を貫いた。
クリスティアーノは嘘をつけない男なのだ。