欧州CL通信BACK NUMBER
「メッシ依存」は過去最高レベルに。
辛くもCL4強を決めたバルサの不安。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAP/AFLO
posted2013/04/11 13:15
試合後、元チームメイトのイブラヒモビッチとガッチリ握手を交わしたメッシ。第1レグ、第2レグともに引き分け、お互いの健闘を称えあった。
ピッチ内外に決定的な影響をもたらしたメッシの登場。
攻守にうまくいかないバルサにとって、前半を0-0で終えられたことが唯一の救いだった。だが第1レグで手にしたリード(アウェーゴール2点を奪っての2-2)も長くは続かない。50分、カウンターからディフェンスライン裏に抜けだしたパストーレに先制点を流し込まれ、前半の劣勢がとうとうスコアに反映された。このままPSGが勝利すれば、PSGの準決勝進出が決まる――。
そこから数分間にわたってバルサはパニック状態に陥り、59分にはアドリアーノが負傷するアクシデントにも見舞われた。それだけに、PSGとしてはここで追加点を決められなかったのが痛かった。ほどなく、メッシが登場してしまったからである。
「メッシは状況が悪くなったらすぐに投入すると決めていた」
ADVERTISEMENT
試合後、これまで監督代行を務めてきたロウラはそう言っていたが、これはバルサにとって大きな賭けだった。それは言い換えれば、状況が悪くならない限りメッシの投入はなかった、つまりメッシは万全の状態にはなかったからだ。
それでも背番号10の登場はピッチ内外に決定的な影響をもたらした。
歯車が狂っていたバルサの攻撃をワンプレーで修正。
54分、ピッチ横でウォーミングアップを開始したメッシに対し、スタンドから盛大な拍手と「メーッシ!」コールが巻き起こる。まずメッシは自身の姿を見せるだけで、失点の動揺に支配されていたスタンドの雰囲気を一変させてしまったのである。
ピッチ上では、それまで歯車が狂っていたバルサの攻撃をワンプレーで修正してしまった。
63分、中盤で相手選手のパスミスを受けたメッシがペドロへくさびを入れる。受けたペドロがダイレクトで狙ったビジャへのスルーパスはディフェンダーに引っ掛かったものの、数分後にはこの3人の連係からバルサを6季連続の準決勝へと導くゴールが生まれる。
71分、メッシがドリブルで突っかけながら前方の狭いスペースへ入り込んだビジャへスルーパス。受けたビジャがディフェンダー3人をひきつけながら後方にボールを落とすと、最後はペドロが渾身の力で左足を振り抜き、ゴールネットを豪快に揺らした。
その後メッシは痛めていた太ももに違和感を訴えるも、ビラノバは実質的に10人で戦うことも厭わず、メッシをピッチに残し続けた。残り1つの交代枠があったにもかかわらずである。