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「メッシ依存」は過去最高レベルに。
辛くもCL4強を決めたバルサの不安。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAP/AFLO
posted2013/04/11 13:15
試合後、元チームメイトのイブラヒモビッチとガッチリ握手を交わしたメッシ。第1レグ、第2レグともに引き分け、お互いの健闘を称えあった。
アウェーの第1レグでは2-2と上々の結果を手にしたバルサだが、カンプ・ノウにPSG(パリ・サンジェルマン)を迎える第2レグに向けては多くの不確定要素を抱えていた。
第1レグで太ももを痛めたメッシの回復は間に合うのか。プジョルに続いてマスチェラーノも負傷離脱したセンターバックには誰を起用するのか。0-0や1-1でも勝ち抜けられる精神的余裕がマイナス効果をもたらしはしないか。
4日前のマジョルカ戦では、メッシの代わりに“偽9番”を務めたセスクがキャリア初のハットトリックを達成。深刻なゴール欠乏症が続くアレクシス・サンチェスも2ゴールを決め、第2レグでの先発が予想されていたDFバルトラも安定したプレーを見せた。
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肝臓癌の再発により1年以上もピッチを離れていたアビダルの復帰という最高のニュースも伴ったこの5-0の大勝はしかし、PSG戦の勝利を保証するものではなかった。当然のことではあるが、マジョルカとPSGではチームも個々もレベルが全く異なるからだ。
名手たちが続々と普段では考えられないようなミスを連発。
バルトラ、アレクシスをベンチに置き、ケガ明けながらより信頼の置かれているアドリアーノとペドロを起用した先発メンバーからも分かる通り、ビラノバ監督もそのことを十分に承知していたはずだ。実際に指揮官はマジョルカ戦翌日の練習前、浮かれる選手達に対して「もう笑顔や祝福は十分だ! 水曜にはシーズンを賭けた一戦が待っている。1分たりとも気を緩めることは許されないぞ!」と鼓舞したという。
しかし、試合では指揮官の懸念が軒並み現実のものとなる。
守ってはキックオフから3分も経過すると球際の出足が遅れはじめ、ブスケッツや、ピケ、アウベス、アドリアーノらが普段では考えられないようなパスミス、コントロールミスを連発。
攻めてはイニエスタのドリブルを仕掛けの合図にセスクやビジャ、ペドロらの細かい連係による崩しを試みたものの、相手も4バックが中央のスペースを固めて待ち受けるため、なかなかパスだけで崩し切るのは難しい。そのため何度も良い形を作り出しながら、いずれもフィニッシュのところではね返されるもどかしい攻撃に終始した。
対するPSGは2ゴールを奪った第1レグで手ごたえを掴んだのだろう。最後方から丁寧にショートパスをつないでバルサの中途半端なプレスを突破しつつ、パストーレのスルーパスとルーカス・モウラの高速ドリブルを交えて速攻を仕掛けていく。
PSGは攻撃の手を緩めない。24分にイブラヒモビッチのスルーパスを受けたラベッシがGKと1対1になる決定機を作ると、28分にはイブラヒモビッチのクロスをルーカスがヘッド。直後のコーナーキックでもジャレのヘッドがゴール左隅を捉え、ビクトル・バルデスに計3度の好セーブを強いた。