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オルフェ、ジェンティルもついに始動!
“ちょっと変わった古馬三強”を検証。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/03/30 08:01
3月17日の阪神大賞典(阪神競馬場)。昨年は、オルフェーヴルの逸走でどよめいたスタンドが、今年はゴールドシップの横綱相撲に沸いた。
一頭の馬が力ずくで他馬をねじ伏せ、レースを支配するシーンを久々に見た感じがする。
昨年のクラシック二冠と有馬記念の覇者・ゴールドシップ(牡4歳、父ステイゴールド、栗東・須貝尚介厩舎)が、今年の始動戦となった3月17日の阪神大賞典(GII、芝3000メートル)を快勝。単勝1.1倍の圧倒的1番人気に応え、古馬中・長距離戦線の天下統一に向けて名乗りを挙げた。
いつものようにやや出遅れ、レース序盤は最後方につけた。そのまま先頭から15馬身ほど離れた後方を進み、3コーナー手前から早くも進出を開始。ゴールまで残り1000メートルもあるところからスパートすれば、先行馬を余裕を持って捕まえられるし、自分についてくる馬たちを消耗させ、切れる馬の瞬発力を封じることができる。
ケタ違いのスタミナと脚力がなければ不可能な1000メートルもの超ロングスパートを、ゴールドシップはいとも簡単にやってのけた。あれでも“六分の力”しか出していなかったというのだからハンパじゃない。
天皇賞・春のきわめて重要なステップレースであるここで、ゴールドシップは「無敵」のひとつの形を見せてくれたと言えよう。
「『これぞGIホース』という走りでGIIを圧勝すること」
その馬が強さを示すのはもちろん「GIを勝つこと」によってなのだが、私は、それと同じぐらいかそれ以上に、「『これぞGIホース』という走りでGIIを圧勝すること」こそ本物の強さを示すものだと考えている。何度もそれを見せてくれた馬としてまず思い浮かぶのは、ゴールドシップの母の父のメジロマックイーンだ。主戦だった武豊は、マックイーンで臨んだ'92年の阪神大賞典や'93年の大阪杯などは、レース前もレース中も負ける気がしなかったという。
マックイーンは、オグリキャップ、イナリワン、スーパークリークの「平成三強」の引退後、ターフの独裁者として君臨した。だが、今年の古馬戦線は、その王者中の王者を彷彿させる走りを見せたゴールドシップでさえ、今のところ「暫定王者」と言わざるを得ない、とてつもない状況になっている。
今年の古馬中・長距離戦線は「三強」の争いになると言われている。
うち一強がゴールドシップ。あとの二強は、'11年にクラシック三冠と有馬記念を勝ち、昨年、世界最高峰と言われるフランスの凱旋門賞(GI、芝2400メートル)で「勝ちに等しい2着」となったオルフェーヴル(牡5歳、父ステイゴールド、栗東・池江泰寿厩舎)と、昨年の牝馬三冠とジャパンカップを勝ったジェンティルドンナ(牝4歳、父ディープインパクト、栗東・石坂正厩舎)。「三強」どころか「三王」と言っていいほど、それぞれが恐ろしく強い。
この三強、1970年代後半にターフを沸かせた、トウショウボーイ、テンポイント、グリーングラスの「TTG三強」のように頭文字をとると、「OGG三強(Orfevre、Gold Ship、Gentildonna)」ということになる。