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広島、浦和でオシムの愛弟子が躍動!
「日本らしいサッカー」'12年の現在地。 

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茂野聡士

茂野聡士Satoshi Shigeno

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photograph byTakamoto Tokuhara/AFLO

posted2012/12/29 08:01

広島、浦和でオシムの愛弟子が躍動!「日本らしいサッカー」'12年の現在地。<Number Web> photograph by Takamoto Tokuhara/AFLO

クラブW杯5位決定戦、2得点を挙げチームを勝利に導いた佐藤寿人。現在、ザックジャパンに呼ばれることは少ないが、オシム監督時代には定期的に出場機会を得ていた。

全ては“ゾーンプレス”をかいくぐるため。

 言葉で表現すると複雑な可変システムだが、最初に編み出したのは今季から広島を率いた森保一監督ではない。昨シーズンまで6年間にわたり広島を指導し、2012年シーズンから浦和レッズを率いるミハイロ・ペトロビッチ監督(以下、ミシャ)である。

 実際、Jリーグアウォーズで最優秀監督賞を受賞した森保監督がスピーチの際、「我々のチーム作りをしてくれた現浦和監督、そして僕の監督でもあるミシャさんに感謝の気持ちを伝えたいと思います」と話すほど、広島はスタイルをほぼ変えずに栄冠をつかんだ。また、2012年シーズンから率いた浦和でも、ミシャは前年J1残留ラインぎりぎりの15位だったチームを、5年ぶりのACL出場権獲得となる3位へと押し上げた。

 ここでシンプルな疑問が湧いてくる。

 そもそも、ミシャはなぜこのような可変システムを採用したのだろうか?

 今季の第2節・柏戦の勝利後の会見における本人のコメントに、そのヒントが隠されているように思う。

「私はアリーゴ・サッキが開発したゾーンプレスを、どうかいくぐるかを長く研究しているのです」

“餌”に相手DFを食いつかせ、守備のほころびを狙う。

 ゾーンプレスと言えばブロック間で狭いスペースを保ちつつ積極的にボールを奪う、今ではサッカー界で一般化した戦法である(名付けたのは、横浜フリューゲルス監督当時の加茂周氏)。その“ゾーンプレス破り”は国内外問わず様々なアプローチで行われている。その筆頭はメッシ、イニエスタら卓越した技術を持った選手たちが縦と横の幅を有効活用して崩しているバルセロナだ。

 一方、ミシャの場合はより極端で、選手たちが攻撃時に縦の幅をわざと“深く”する時があるのだ。攻撃時にとる「4-1-5」のフォーメーションは、一見すると中盤が薄くなって間延びしたポジショニングに見えるが、この狙いは本来ボールをもらいたい位置、システムで言うなら「1-5」の中間点となるバイタルエリア、もしくは最終ラインの裏のスペースを空けるため、自陣でボール回しをしながら“餌を撒いている”状態なのだ。

 この“餌”の誘惑に負けた相手チームが不用意にプレスを仕掛けてくると、前線の選手が空いたバイタルエリアや最終ラインの裏へと走り込む。そして後方の選手は縦パスもしくはサイドアタッカーへのロングパスを入れて、攻撃を組み立てていく。

 もちろんこの中に、選手個人のアイデアが織り交ぜられるのだが、基本的にはこうした組み立てを繰り返していくのがミシャ・スタイルである。

 冒頭で記述したクラブW杯の蔚山戦で広島が挙げた2点目は、その特徴が分かりやすく出た。ボランチの青山敏弘が中央から左サイドにボールをはたく。それを受けた山岸智は、2シャドーの高萩洋次郎と森崎浩司に気を取られて寄せの甘くなった蔚山守備陣を見逃さず、最終ラインとGKの間を狙ったグラウンダーのクロスを入れる。そこにいち早く佐藤寿人が走り込み、ボールの軌道を変えて決勝点を奪ったのだ。

【次ページ】 EUROでのイタリアと広島や浦和の類似点とは?

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