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9回、武田久登板に込められた意図。
総力戦制した日ハム・栗山采配の妙。  

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byHideki Sugiyama

posted2012/11/01 11:50

9回、武田久登板に込められた意図。総力戦制した日ハム・栗山采配の妙。 <Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

試合後に栗山監督は「中継ぎ陣、武田久たちを含めて、無理にいってもらっているところもあるので……本当にみんな、よく我慢してくれました」と、移動日を除き厳しい連投が続く中継ぎ陣を称えた。

“裏の攻撃”という利点を活かした武田久の継投策。

 マウンドに上がったのは守護神の武田久。

「普段通りの野球」を貫く栗山采配からすれば、これはごく自然な流れなのかもしれない。だが、この時点ではまだ0対0。本来ならば、武田久の前を投げることが多い増井浩俊にこの回を任せてもよかったはずだ。

 しかし、ここにこそ、栗山采配の妙を垣間見ることができる。

 ホームゲームのため、裏の攻撃という利点もあっただろう。武田久を9回のマウンドに上げることで、「この回を0点に抑えて、裏の攻撃でサヨナラ」といったプレッシャーを巨人に与えることができるし、守護神が投げることによって味方打線の士気も高まる。

 この回、武田久は2死満塁のピンチを招いた後、「代打の切り札」石井と対峙するという絶体絶命のピンチを迎える。

 しかしそれも、彼にとっては想定内の範疇だったのだろう。

「抑えというのは、ある程度の経験をこなしていけば毎日が同じことの繰り返しになる。だからだんだん、過程というより『0点に抑える』ことをモチベーションとして投げていることが多くなると思うんです」

 そう話していたのは、ロッテ時代に守護神を務めていた小林雅英だ。

 この場面、抑えとなって4年目の武田久には、それができていた。

武田久の投球は、巨人に大きなダメージを与えていた。

 石井へ投じた3球全てが内角高め。

 このゾーンで安打になるとすれば、内野の頭を越える打球くらい。ほとんどのケースでフライになる。武田久はそれを分かった上で、このコースに投げ続けたのだろう。そして、石井をレフトフライに打ち取った。

 敵の決定的なチャンスを潰す――。拮抗した試合において、結果的に彼の投球は巨人に大きなダメージを与えることとなった。

 4番手の増井が10回、11回を無安打に抑えると、12回は5番手の宮西尚生が三者連続三振であっさりと巨人打線を片づける。

 流れは完全に日本ハムに傾いていた。

【次ページ】 「本当の勝負は明日(11月1日)から始まります」

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