負けてなお潔いふたりには名監督の風格あり。

　試合は初戦となった2回戦で倉敷商と対戦。

　一時は逆転するも、終盤に守備のミスから畳みかけられて6失点し、敗れた。

「このボールを何としてでも捕ってやるんだという想いの差が、倉敷商に勝利を傾かせた要因だと思います」と松葉は振り返った。

　初戦で敗れてしまったとはいえ、練習時間が限られ、さらには、グラウンドも十分に使えない中で甲子園に来たことは、それだけでも十分な意義があったはずだ。松葉の手腕という意味においても、久居農林とは違う気質の選手を大舞台に連れてきたのだ、その指導力、推して知るべしである。

「グラウンドが狭いとか、選手がいないとか、指導者にはいろんないいわけができると思うんです。けど今回の出場で、そうじゃないんだということを発信できたかなと思います」

　藤原監督と松葉監督。

　ともに、夏の甲子園では序盤で姿を消して、人々の記憶には残らないだろう。

　だが、隠れた名監督として、語り継ぎたい。

　それほどの手腕を彼らは示していた。