セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
ナポリとローマから目が離せない!
今季スクデット戦線も下克上の兆し。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2012/08/24 10:30
愛煙家として知られるナポリのワルテル・マッツァーリ監督。イタリア・スーパーカップでの騒動で1試合のベンチ入り停止処分を受け、開幕戦は指揮を執れなくなった。
開幕前夜のセリエAから、下克上の気配が漂っている。主力の大量放出や世代交代の渦中にあるミラノ勢に代わって、打倒ユベントスの急先鋒として浮上してきたのが、南イタリアの2強、ナポリとローマだ。
その一方のナポリはというと、ユベントスの間ですでに遺恨の火花が散っている。
8月11日に北京で開催されたイタリア・スーパーカップで、両者は激突した。大雨の中、ナポリのFWコンビ、カバーニとパンデフが切れのある高速カウンターからそれぞれゴールをあげる一方で、ユーベは新加入となるMFアサモアが豪快なボレーを突き刺す。そして後半29分にはユーベがPKで2-2の同点に追いつくが、引き締まった好ゲームは後半40分のパンデフの退場によって一転、荒れた展開となる。ロスタイムには、ナポリは2人目となるMFスニーガまで退場となった挙句、猛抗議のマッツァーリ監督にも“レッドカード”が突きつけられた。
9人となったナポリは延長戦の30分間、一方的に攻められ続け、2点を奪われた。抵抗むなしく2対4で敗れると、怒り心頭のクラブが表彰式をボイコットする騒ぎに発展した。
ユベントス側の嫌味に舌戦で応えた智将の対抗意識。
勝ち試合を不可解な判定でひっくり返されたマッツァーリは沈黙を保ったが、ナポリの強硬な態度には批判が相次ぎ、ユベントスのオーナー一族からはロンドン五輪にかこつけて「ナポリには(ルールを尊重する)崇高なオリンピック精神が欠ける」と嫌味めいた非難も受けた。
これにはさすがの智将も黙っていられず、反撃に出た。
「(スポーツマンシップについて)ユベントスにだけは言われたくないな。協会が正式に28回だと定める優勝回数を『30回だ』と厚顔無恥にも強弁しているのは、どこのクラブだ? ユベントスの方こそ、口をつぐむべきだろう!」
先駆者としての意地がある智将は、昨季のセリエAで最少失点を誇ったユベントスの3バックについても「私の守備戦術の二番煎じにすぎん」と一蹴。優勝監督コンテへの対抗意識を露わにしている。
補強による戦力アップでさらに完成度が高まったナポリ。
夏の移籍市場でナポリは着実な戦力アップを図った。
FWラベッシをパリSGへ放出したことで得点力低下が危惧されたが、代わりにペスカーラでの武者修行から呼び戻したイタリアU-21代表FWインシーニェが急成長。キャンプ地で組まれたバイエルン・ミュンヘンとの練習試合でも決勝点を奪った。身長163cmの高速ドリブラーは生粋のナポリっ子で、早速“ナポリのメッシ”の異名がついた。ただし、FWカバーニのエース待遇は不変だ。
昨季のコッパイタリアを制したチームに、指揮官が熱望したMFベーラミとDFガンベリーニ(ともに前フィオレンティーナ)が加わり選手層に厚みが増した。レバークーゼンやボルドーなど国外強豪とのプレシーズンマッチでも連戦連勝。新布陣3-5-1-1は完成度を高めつつある。