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<ナンバーW杯傑作選/'06年7月掲載> ついに生まれなかった闘争心。 ~ドイツW杯をデータで徹底分析~
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byShinji Akagi/Koji Takano(JMPA)
posted2010/05/28 10:30
しかし、その結果はあまりにも受け入れ難いものだった。
なにゆえジーコジャパンは、かくも無残な幕切れを迎えてしまったのか。
それを検証しないまま、今大会の記憶を過去のものにしてはならない。
4年後に向けた戦いは、まずそこから始まるはずだ。
オシムの代表監督就任に続いて中田英寿の現役引退が発表されたことで、世間の注目はいよいよポストW杯に向いている。しかし、このまま何の反省もなく新しいページを開いていいはずはない。
ドイツW杯を検証しなければ、新チームの方向性もはっきりしない。新監督に何を求めるのかも明らかにならない。ベスト16入りを阻んだ要因は何だったのか。世界にあって日本になかったものは何なのか。4年後の南アフリカへの指針を整理しなければ、日本にとってのドイツW杯は終わらないのだ。
昨年6月にアジア予選を突破してから、私はディフェンスをベースにしたゲームプランの重要性を指摘してきた。昨年6月のコンフェデ杯のメキシコ戦では、先制点を奪いながら逆転負けを喫した。同年10月のラトビア戦では、2点のリードを守り切れなかった。今年に入っても同じようなゲームが続いた。5月30日のドイツ戦でも、2点のリードをはね返されている。
アジア以外の対戦相手とのゲームでは、日本の組織が機能してもなお押し込まれるのは避けられない。それだけに、守勢をいかにしのぐかは勝敗に直結する。ディフェンスをベースにした試合運びができるか否かは、グループリーグ突破へのカギだった。
確認すべき項目を残したまま、日本はW杯本番を迎えた。
5月の福島合宿やドイツ入り後のボン合宿では、戦術的なトレーニングが行われた。中田英とチームメイトの意見交換が報道され、組織が熟成しているような印象を与えた。
しかし、遅きに失した感は否めなかった。直前まで確認すべき項目を残したところに、そもそもの間違いがあったのではないか。
日本人のポテンシャルを、ジーコは誰よりも信じていた。1年前のコンフェデ杯でギリシャやブラジル相手に見せたプレーを、今回も再現できると信じていた。ドイツ戦で3-5-2のシステムがまずまず機能したことも、自信を深めることにつながったと推測できる。
しかし、フィジカルコンディションが十分ではなかった。「オーストラリア戦は決勝戦のつもり」と位置づけながら、もっとも重要な一戦で動けない選手が続出してしまったのは、暑さだけが原因ではない。コンディショニングを誤ったと考えるのが妥当だ。
ジーコと里内猛フィジカルコーチは、「日本はフィットネスに問題を抱えていた」というオーストラリアのクリナの言葉を、決して聞き流すことはできない。プレスの質と量は、個々の活動量を前提としている。コンフェデ杯のパフォーマンスも個人の頑張りに基づいていたことを、ジーコは軽視していたのだ。
90分を戦い抜くスタミナがなければ、時間の経過とともに劣勢に陥るのは必然である。コンディションが十分でなければ、ミスをカバーできないし、相手のミスを誘発することもできない。ディフェンスをベースにしたゲームプランから、大きくかけ離れてしまう。もはや相手の攻撃をゴール前ではね返すしか、守りの選択肢はない。