敗退したとはいえ、森に一歩も引けを取らない笠原。

　笠原の父・栄一さんが'84年のドラフトでロッテから1位指名を受けた元超高校級右腕であることは、笠原の注目度がアップするごとによく知られるようになった。デーブこと大久保博元・楽天打撃コーチと同期で、K.K.コンビ清原和博、桑田真澄の1年先輩である。兄の将生は現在巨人に在籍して、今季一軍で2試合に登板して防御率5.40（勝敗なし）という成績を残している。

　いわゆるエリートと形容していい選手だ。ストレートの球速はMAX143キロとそれほど速くはない。ただ、185センチの長身を利したボールの角度が一級品で、とくに高さを生かして切れ込んでくるスライダーは超高校級と表現していい。

　スポーツマスコミは同じ左腕の東福岡・森雄大を1ランク上のように評価するが、ボールの出所の見えにくさや、打者の手元でひと伸びするストレートの質のよさなどを見ても、同ランクと評価しても違和感はない。

　ただ残念なのは、私が見た沖学園戦で福岡工大城東は2対3で敗れてしまっていることだ。

　それでもあえて笠原をここで紹介したのは、東福岡の森とは自他ともに認めるライバル関係を築いているからに他ならない。

「投球フォームは直すところがありません。昨年の武田翔太以上」

　エリートの笠原がまずマスコミに登場して、それを森が追いかける――ライバル関係としては最高の展開である。香住丘戦での森は、背番号11をつけて先発し、ストレートはMAX146キロを記録している。高校生のスピードは表示された数字と、実際にその場で見た体感とに誤差があるのが普通だが。確かにそれくらいのボリュームがあった。

　笠原のストレートは糸を引くように「シュー」とキャッチャーミットに収まるのに対して、森のストレートは投げた瞬間にキャッチャーミットに「ズドン」という音とともに収まる。表現すれば快速球と剛速球くらいの違いはある。それを森の優位性というよりは、個性の違いだと私は思っている。

　地元のマスコミの方に聞くと、「投球フォームは直すところがありません。昨年の武田翔太（宮崎日大高校→ソフトバンク）以上です。ストレートのMAXは148キロ。ゲーム終盤でも146～147キロは出ていて、コンスタントに140キロ以上のスピードを出せるのが特徴です。変化球は縦・横2種類のスライダーにスローカーブ、そしてチェンジアップ。スローカーブは100キロ台で腕が振れます」と教えてくれた。

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