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全国屈指の逸材が集結する福岡大会。
甲子園を沸かせるエースは誰だ? 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2012/07/24 12:00

全国屈指の逸材が集結する福岡大会。甲子園を沸かせるエースは誰だ?<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

東福岡のエース左腕・森雄大。低めから伸びてくる最速148キロの直球に加え、カーブ、スライダー、チェンジアップと変化球の制球力も抜群。福岡大会には12球団のスカウトが集結し、熱い視線を送る。

高校時代の東浜巨のように自己分析ができる点が強み。

 香住丘戦翌日の日刊スポーツ紙にはスカウトのコメントが掲載されているので、紹介させてもらう。

「球の質がいい。キレがあってスピードガンより速く感じると思う。うちの岸みたいなタイプですね」(西武・奥薗編成部部長)

 森本人のコメントも同紙に掲載されていて、そこには「期待に応える投球ができなかった。満足かと言われれば全然でした」とある。

 私はこれを見て、心が動いた。

 実は私もこの日のピッチングはいいとは思わなかった。ストレートは確かに凄いが、フォームがよくなかった。一言で言えば、上半身が急ぎすぎるのである。

 プロでエースと呼ばれるような投手は例外なく、下半身が打者のほうにステップ幅約6足半から7足で伸びていき、上半身がそれを追いかける。つまり微妙に下半身と上半身は違う方向に動いて、部分部分で体を割っていく。しかし、香住丘戦の森は下半身と上半身が常に同じ方向に動いているような印象を受けた。これは「手投げ」と表現されるもので、マイナス評価していい。

 だが森をさすがと思うのは、そういうピッチングを「全然評価していない」と自己分析できているところだ。高校時代の東浜巨(沖縄尚学→亜細亜大)がまさにそういう自己分析がしっかりできている選手だった。

 7月23日現在、森は準々決勝進出が決まったばかりで、今後は福岡大大濠とベスト4進出をかけて戦い(25日)、ここを勝ち抜けば九州国際大付など県内の強豪と甲子園進出をかけた戦いを繰り広げていくことになる。

全国レベルの実力を持つ東福岡には、もうひとり魅力的な投手が。

 最初に戻って、「好選手とセットで甲子園を沸かせる」という九州的な尺度を用いて東福岡を評価すると、森雄大という大エースを擁し、全員野球で得点を重ねていく東福岡の攻撃スタイルは甲子園でも十分通用すると思う。心強いのは投手が森1人ではなく、やはりプロのスカウトが注目する野原総太(3年)という、背番号1をつける右腕が控えていることだろう。

 香住丘戦では先発した森が3回まで投げ、4、5回の2イニングを野原が締めている(試合は20対0で東福岡が5回コールドで勝っている)。

 野原のいいところは森とは異なり、内回りのバックスイングでヒジが自然と高く上がるところである。森のバックスイングは外回りするため、テークバックでヒジの位置が下がり、これを上げるために1つ余計な動きをしなければならない。数少ない課題である。

【次ページ】 カミソリのような切れ味のある快速球を投げる野原。

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