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<W杯予選、土壇場での涙> 世界の“悲劇集” ~フランス/オーストラリア/中国/カメルーン~
text by
粕川哲男Tetsuo Kasukawa
photograph byKoji Asakura
posted2013/10/28 06:00
W杯予選で悲劇を経験したのは日本だけではない。
'93年11月17日、“ドーハの悲劇”の20日後にはフランスが絶望を味わった。当時のフランスは「世界最強」とも形容されたカントナ、パパンを筆頭に、デシャン、プティ、デサイー、ブランなど多くのタレントを揃え、前評判が高かった。グループリーグの初戦でブルガリアに敗れたものの、順調に勝点を重ね、ホームでの2試合を残して首位。本大会出場は確実と思われた。
だが、アウェーでは4-0で一蹴したイスラエルに終了間際の失点で金星を献上すると、最終のブルガリア戦でも悲運に見舞われる。カントナの先制点の直後にコスタディノフに追いつかれ、引き分けでも予選突破が決まる89分59秒、再びコスタディノフに決められた。敵陣でFKを受けたジノラが時間を稼がずクロスを上げ、そのボールを一気に前線まで運ばれると、角度のない位置から豪快にネットを揺らされたのだ。
2試合続けてタイムアップ寸前に失点し、あと一歩のところでアメリカ行きの切符をブルガリアに奪われた一戦は、フランスにとって忘れたい記憶に違いない。
4回も大陸間プレーオフで涙を飲んだオーストラリア。
4年後、フランスW杯予選ではオーストラリアが大陸間プレーオフで涙を飲んだ。6戦全勝でオセアニア地区代表となったオーストラリアは、“ジョホールバルの歓喜”で日本に敗れてアジア地区4位となったイランと激突した。'97年11月29日の第2戦、メルボルン・クリケットグラウンドには8万5000人を超す観衆が詰め掛けた。試合はオーストラリアのペースで進む。
32分にキューウェルが先制、後半開始直後にビドマーが追加点。しかし、75分にバゲリに1点を返されると、4分後にアジジに同点とされる。結局、試合は2-2で幕を閉じ、アウェーゴールの差で明暗が分かれた。オーストラリアにとって大陸間プレーオフは鬼門。'86年メキシコW杯予選ではスコットランド、'94年アメリカW杯予選ではアルゼンチン、'02年日韓W杯ではウルグアイと対戦し、すべて敗れている。
'06年のドイツW杯予選、悲劇の序章の舞台は一次予選の行なわれていた中国だった。5戦目でクウェートに敗れた中国は最終の香港戦を前に、マレーシア戦を残すクウェートと同勝点で並んだ。最終戦での両チームの勝利は確実で、得失点差が天国と地獄を分けるのは誰の目にも明らかだった。
'04年11月17日、同時刻に始まった2試合は予想通りの展開となる。中国が怒濤のゴールラッシュを見せれば、クウェートも終盤にゴールを量産。終わってみれば中国が7-0、クウェートは6-1で大勝した。その結果、14得点1失点の中国は、15得点2失点のクウェートにわずか1得点及ばず最終予選に進むことができなかった。