ロンドン五輪代表、最大の挑戦BACK NUMBER
'99年の中田英寿と同じ匂いがする!?
遅れてきたU-22の新星・大津祐樹。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byTakuya Sugiyama
posted2011/11/28 12:25
180センチ、73キロの21歳、大津祐樹。鹿島アントラーズの下部組織で育ったがユースへ進めず。その後、成立学園高校を経て柏レイソルへ。現在は、ブンデスリーガの名門ボルシアMGでプレーする
「彼の貪欲さが我々のチームに力を与えてくれた」
扇原も「大津くんはドリブルもうまいし、タメも作れる。ちょっとタイプは違うけど、キヨクン(清武)と似ている部分もあるんで、すごく頼もしいです。それに短時間でチームにフィットしたのはすごいなって思いました。攻撃陣の層が厚くなってチームにとってはすごいプラスになりましたね」と、絶賛した。関塚監督も「彼の貪欲さが我々のチームに力を与えてくれた」と、大津効果を語った。
途中加入でこれだけ速効性の高い効果をもたらしたのは、1999年の中田英寿以来だ。
黄金世代中心のシドニー五輪代表に初招集された中田は、最終予選の初戦であるアウェイのカザフスタン戦で先制ゴールを決めるなど大活躍し、予選突破の救世主となった。
今回の大津のプレーも救世主に相応しいものだった。
ゴールはもちろん、体の強さを活かしたキープ力、得意のドリブル、2列目からの飛び出しなど、清武不在の中で攻撃のアクセントとなった。また、大迫勇也、山田直輝、比嘉とのコンビネーションも良かった。バーレーン戦2日前に合流して、これだけの短期間で連係を磨けたのは、高い技術と優れた戦術眼を持っているからだろう。
「泥臭くても1点は1点。ゴールに対する貪欲さをドイツで学んだ」
特筆すべきは、大津の守備面での貢献だ。
スライディングでボールを奪うと、そのままドリブルに転じるプレーは、関塚監督が求める攻守の切り替えの速さを体現した。ドイツでは、まだ結果を残していないが、食事や専属のフィジカルコーチを付けて肉体改造に取り組むなど、生き残りを賭けた日々を送る中、地道に成長している姿を見せてくれたのだ。
「日本では繋いできれいにサッカーをやることを考えていた。でもドイツでは、どんな形でもFWは1点を取るのが重要。泥臭くても1点は1点なんです。そのゴールに対する貪欲さをドイツで学んだし、それを今回出せたのは自分自身すごく良かったと思います」
大津は端正な顔に柔和な笑みを浮かべて、そう言った。