同点に追い付かれ「正直、ガクッときた」。

　立ち上がり、集中力を欠きボンヤリ試合に入ってシリアに主導権を握られた。すると、後半30分、酒井宏樹と鈴木大輔がお見合いをする形で10番に中央から突破され、最終予選初の失点を喫し、同点に追い付かれた。

「正直、ガクッときた」

　扇原貴宏がそう語ったように、ショックを受けた選手も多くいたようだ。

　6月のアウェイのクウェート戦は、同点にされた後、相手の勢いに呑まれ、ほとんど何も抵抗もできず、最後に逆転された。あの悪夢の敗戦が脳裏をよぎった選手もいたはずだ。

　だが今回、彼らは怯まなかった。無抵抗どころか、戦う姿勢を前面に打ち出し、攻撃のギアを一段上げた。そして、効果的だったサイドバックの裏のスペースを使った攻撃を丹念にやり始めたのだ。彼らは、前半の良かった攻撃を踏襲して、失われそうになった流れを自分たちで取り戻し、攻勢に転じたのである。

大津祐樹は2連戦で続けて得点し、特別な選手へと変身しつつある。

「もうクウェート戦の二の舞は、ゴメンだと思っていたんで。ここで引っ繰り返さないと、次はないぐらいの気持ちで2点目を取りに行っていた。その気持ちは、みんな共有できていたと思います」

　東は、そう言ったが、選手の気持ちに呼応するように関塚監督も永井謙佑を投入し、勝ち点1ではなく3を取るんだというメッセージをピッチの選手に投じた。後半41分、比嘉祐介の「まぐれ」というクロスから生まれた、大津祐樹の「ゴールへの強い意識が生んだ」決勝ゴールは、アウェイのクウェート戦から成長した彼らの攻めの姿勢と諦めない気持ちが生んだ必然的なゴールだった。

　それにしても大津は、持っている。

　2連戦で2発だが先制点と決勝点という勝負を決めるゴールを決めており、特別な選手になりつつある。

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