詳説日本野球研究BACK NUMBER
巨人・長野、中日・伊藤……、
各球団の新人王候補を斬る!
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byHideki Sugiyama
posted2010/03/13 08:00
オープン戦でも勝負強い打撃が光り、“チーム内三冠”を狙うほど好調を維持している
故障をバネに成長した伊藤準規のプロ意識。
もう1人紹介したいのは、プロ2年目の伊藤準規(岐阜城北→中日)だ。高校3年秋の取材では野球に対する意識の高さに魅了された。2年秋に右ヒジを故障し、それから8カ月間実戦で投げられない日々が続いたが、この期間中に開き気味だった右肩をしっかり閉じる工夫をしたというから只者ではない。具体的には全方向からビデオ撮影し、開きの要因を探り、納得のいくフォームに作り変えていったのである。
プロ1年目の昨年は9月30日に行われた巨人相手の一軍戦で1回無失点デビューを飾ると、3日後のファーム日本選手権(対巨人)では先発して5回3分の1を投げて勝利投手になっている。MAX153キロのストレートだけでなく、キレ味鋭い縦割れのスライダーを筆頭にフォークボール、ツーシーム、カーブという多彩な変化球を備える。キャンプ中盤に行われた韓国サムスンとの練習試合では3回を投げ、3連続を含む4三振を奪って無失点の快投を演じている。新人王の伏兵的存在と言っていい。
混戦のパ新人王争いから抜け出すのは岩嵜翔か。
パは本命なき群雄割拠で、名前を挙げた6人にはチームの弱い部分を補う活躍が期待されている。とくに、世代交代が加速しそうなソフトバンク投手陣の中にあって高校卒3年目の若さを誇る岩嵜翔(市船橋)のピッチングには期待が集まる。
前出の伊藤にくらべるとスライダー、チェンジアップ中心の変化球は多様さに欠けるが、球速はMAX152キロで互角。伊藤が昨年のファーム日本選手権なら、岩嵜は2年前のファーム選手権でヤクルト打線を5安打、1失点で完投してMVPに輝いている。昨年はこの勢いに乗れなかったが、新旧交代の二波、三波はまだ続いているので、波に乗るチャンスは十分ある。