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巨人・長野、中日・伊藤……、
各球団の新人王候補を斬る! 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byHideki Sugiyama

posted2010/03/13 08:00

巨人・長野、中日・伊藤……、各球団の新人王候補を斬る!<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

オープン戦でも勝負強い打撃が光り、“チーム内三冠”を狙うほど好調を維持している

 3月は“球春”という言葉の響きのように、若手の活躍に期待が集まる季節。早速「新人王の資格を残す」という視点で期待の若手を両リーグ6人ずつピックアップしてみた。

[註] 新人王の資格=「その年の新人」、あるいはプロ5年以内の「投手なら30イニング以内、打者なら60打席以内の選手」

◇セ・リーグ……長野久義(外野手・巨人)、伊藤準規(投手・中日)、大島洋平(外野手・中日)、二神一人(投手・阪神)、今村猛(投手・広島)、松本啓二朗(外野手・横浜)

◇パ・リーグ……大塚豊(投手・日本ハム)、中田翔(外野手・日本ハム)、岩嵜翔(投手・ソフトバンク)、武隈祥太(投手・西武)、荻野貴司(外野手・ロッテ)、延江大輔(投手・オリックス)

走・攻・守そろった長野久義に死角なし。

 セでは長野久義(Honda→巨人)に最も期待している。社会人2年目に臨む直前の2年前に取材したとき「セールスポイントは?」と聞くと「顔です」と即答した。しかし、日本ハムに続いてロッテのドラフト指名も断って巨人に入団した今は使命感が強すぎるのか、軽いノリで報道陣の質問に答えられないようで、「松本(昨年の新人王)に勝つ自信は? 2番はまだ経験していない打順だけど、やれと言われたら?」とキャンプ早々矢継ぎ早に質問すると、困った顔をして「質問が難しすぎます。もっと無難なこと聞いてください」と泣きが入った。

 この長野の最大の特徴はベースから遠く離れた打席中央の立ち位置で、これは同じ新人の清田育宏(外野手・ロッテ)以外、日本人では見た記憶がない。鋭く踏み込んで内角はレフトに、外角はライトにさばく広角打法が持ち味だが、踏み込んだときに内角を際どく突かれるとこれがカウンターパンチになって、それ以降踏み込みが甘くなり、外角に逃げる変化球を追い切れない、あるいは追いすぎて田澤純一(新日本石油→レッドソックス)クラスの投手を打ちあぐんできた。

 それが社会人3年目になるとタイミングをゆったり取れるようになり、その結果内角球のカウンターパンチ効果が薄まり、そのあとの外角球の見極めもよくなった。昨年行われた2つの大舞台では、都市対抗が打率.579で首位打者、日本選手権が打率.381を記録して打撃賞を獲得し、プロ入り後のオープン戦ではロッテのローテーション投手、唐川侑己から満塁ホームランを放つなど好結果を出している。

 ちなみに、走塁と強肩はプロの世界でもトップレベルで、キャンプ中盤の紅白戦では右前打(ダイレクト捕球の可能性もあったライナー性のヒット)で三進を狙う二塁走者を三塁で補殺して原監督を喜ばせた。今、「レギュラーの座は見えてきた?」と聞いたら、長野は何と答えるだろうか。

【次ページ】 故障をバネに成長した伊藤準規のプロ意識。

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