野球善哉BACK NUMBER
日本ハム・中田とオリックス・岡田。
“未来の大砲”の異なる起用法。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2009/06/24 13:50
「もう少し、早くても良かったかなとは思うけど、いい時期に上げてくれたと思うよ。たとえ、これでダメだったとしても、本人にとっては、なにがアカンかったかわかるだろうから、それだけでも価値はあるよ」
日本ハム・中田翔が一軍昇格を果たす前日の5月19日、二軍打撃コーチの中島輝士氏と話していた時に聞いた言葉だ。
果たして本当にそうなったのだろうか。
梨田監督が中田を昇格・降格させた思惑とは?
中田はイースタンリーグ4月の月間MVPを獲得。ホームランを量産、打点を荒稼ぎして、一軍に昇格したのが5月20日のこと。しかし、それから33日たった6月22日、交流戦終了と同時に二軍行きを命ぜられた。「使うところがない」という理由が、主だったメディアには流れた。一軍在籍日数、33日にして出場11試合。うちスタメンが1試合のみ。先発以外で2回以上打席に立ったのは1回で、残りの打席は難しいとされる代打での出場ばかり。プロは結果がモノを言う世界だとはいえ、経験のない若手の打者が代打だけで結果を出すのは、そんな容易なことではない。
梨田監督の思惑も分からないでもない。監督という責任を取る立場にいる人間にしか分からない理由というものもあるからだ。そこを否定するわけではない。とはいえ二軍打撃コーチのあの言葉を聞いてしまっている以上は、やはり中田には何かを感じ取った上で二軍に落ちていてほしいという願いはある。今回の起用法を見る限り、プロ入り2年目の中田が短い期間とはいえ一軍に昇格した価値はそこにしかないからだ。
中田と“浪速のゴジラ”岡田貴弘の奇妙な縁。
中田が一軍に昇格したのとほぼ時を同じくして、一軍に昇格したスラッガーがいた。オリックスの岡田貴弘である。中田がイースタンのホームランバッターなら、岡田はウェスタンのホームランバッター。4月の月間MVPならびに、本塁打王、打点王の2冠を引っ提げて、一軍に昇格した選手だ。岡田の方が2学年先輩だが、境遇としては似ている。
岡田は高校時代から注目されたスラッガーだった。高校通算本塁打は55本で「浪速のゴジラ」という愛称で親しまれ、鳴り物入りで06年に入団した。高校最後のホームランが中田から打ったという奇縁も面白いのだが、しかし、その前評判とは裏腹に、プロ入り以降、それに見合った活躍を見せたことはなかった。毎年、キャンプイン前までは、名前の挙がる選手であっても、オープン戦が始まる頃には名前がなくなる何人かのうちのひとり。それがここ近年の岡田だった。