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超新星・山田直輝が照らすニッポンの未来。
text by
小齋秀樹Hideki Kosai
photograph byTakuya Sugiyama
posted2009/06/12 11:00
「典型的な日本人」だからこそ世界に通用する。
達也のようなチェイシングのスピードには欠けるが、山田もディフェンス面での貢献は大きい。マイボールが失われると、すぐに全速で駆けつける。身体の小ささをむしろ武器として、低く安定した重心で相手に寄せ、相手とボールのわずかな隙間に身体をねじ込むようにしてボールを奪うことも多い。
山田は代表チームのサッカーへの印象を、「日本人の力で世界と戦えるようなチームを目指していると感じます」と語った。
そして、こう続ける。
「僕も典型的な日本人の能力なので、そういうサッカーで世界にどれだけ通用するか、自分自身がいちばん確かめてみたいと思っています。自分はスピードもないし、フィジカルも身長もない。でも、労を惜しまずに守備をしたり、小技を効かせたり、長い距離を走る能力というのは外国人にも負けずにあると思うので、そういうところを出せるサッカーを僕はやりたいと思ってますし、試合に出ることができたら、日本人のよさというものもアピールできたらと思います」
「プロは実績じゃなく実力」と断言する意志の強さ。
山田は、日本代表を「目標というより夢に近いもの」と表現した。しかし、それはすでに過去のことだ。少年時代の“夢”であったレッズの一員となって、すぐに試合出場を目指したように、日本代表でも向かうところは同じだ。
昨シーズン、ベンチ入りもままならなくなった時期に、彼が言っていたことがある。
「ポジション的にかぶる人たちとの競争で負けたらダメだと思うんで、練習では同じポジションの中でのランキングというか、今日は自分の方が上だったとか下だったとか、いつも考えてやってます」
山田の言う「かぶる人たち」は、彼にくらべればはるかにキャリアのある選手たちで、自分に対して「まだ負けても仕方ない」と言い訳してもよさそうなところだった。だが、山田直輝にはそういった逃避がない。
「プロは実績じゃなく実力。そう考えてやってます」
文字にすると、当時18歳になったばかりの選手が口にするには生意気な言葉にも見える。だが、彼と話しているときは、そう感じなかった。きっと、立ち向かおうとする意思の強さに気圧(けお)されたのだと思う。
山田直輝
1990年7月4日、広島県生まれ。ジュニアユースから浦和に在籍。'08年、17歳9カ月でJリーグデビュー。今季からトップ昇格を果たし、4月29日の清水戦でプロ初ゴールを記録した。ユース代表でも活躍しており、'07年のU-17W杯には3試合に出場。今年の5月21日にW杯アジア最終予選のメンバーに招集され、チリ戦で途中出場し、A代表デビューを果たした。166cm、64kg