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超新星・山田直輝が照らすニッポンの未来。 

text by

小齋秀樹

小齋秀樹Hideki Kosai

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2009/06/12 11:00

超新星・山田直輝が照らすニッポンの未来。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

初々しい見た目からは想像できない闘争心。

 しかし、単に初々しいだけの選手ではなかった。目標を尋ねると、こう答えた。

「今年中に天皇杯でもナビスコカップでもリーグ戦でもなんでもいいので、少しでも試合に出ることが目標です」

 その時点での浦和は、リーグ開幕戦からの連敗と、それに続いた監督交代というゴタゴタを乗り切り、3連勝で順位を4位へと上げたばかりだった。チーム内では、プロ入り3年目を迎えても試合に絡めない選手が多いという状況。その末席に加えられたばかりの山田からは、「まずはトップの練習に慣れて、レベルアップしたいです」といった殊勝な返答を予想していたため、驚いたことをよく覚えている。まだ18歳になっていない彼は、試合に出場することが目標だと、あどけない顔でサラリと言ってのけたのだ。

“ダイナミズム”でチームの活性化に貢献したが……。

 チャンスは思いの外早くに巡ってきた。4月26日、負傷者の多さもあり、山田はアウェー遠征に初帯同、京都サンガに4-0とリードしての後半35分からピッチに送り出された。試合後には、「今年の目標、達成しちゃいました」と本人も拍子抜けした感じで笑っていた。その後、6月8日のナビスコカップ名古屋戦でもほぼ同じ時間から出場を果たした。

写真

1歳下のFW原口元気と共に次世代のレッズを担うとされる山田
 

 この時期、二種登録されていたのは山田だけではなかった。同じ日に高橋峻希、約1カ月後には1学年下の原口元気も加わっていた。

 ユース所属の彼ら3人のプレーには、共通点があった。

 ダイナミズムだ。

 頭で考える前に身体が動く、あるいは動きながら考える。立ち止まることもスピードを緩めることもない彼らの動きは、トップチームのサッカーの中で明らかに異質なものだった。サテライトの試合でも、ユース所属の彼ら3人が絡むと、チーム全体の動きは目に見えて活性化した。

「サッカーは11人でやるものだぞ」

「いいか、助け合ってやれよ」

 それが、ユースチームの監督・堀孝史の口癖だった。教育論的な話ではなく、実際にレッズユースのサッカーは11人で助け合う、つまりサポートや連動してのプレッシングが重要視されるサッカーだった。その中で、山田はボランチあるいはトップ下として、文字通り縦横無尽に走り回っていた。山田と高橋、原口らはトップの練習に参加しながらユースの試合が近づくとそちらへ戻るという生活をしばらく続け、10月には高円宮杯全日本ユース選手権(U-18)大会で優勝。決勝戦では名古屋グランパスU-18に9-1と大勝、山田は大会得点王の座も獲得した。

 しかし、トップチームでの公式戦出場は前述した2試合から増えることはなかった。ロスタイムを含めても合計30分に満たない出場時間のまま、サッカーのために転校した単位制高校を卒業した。

【次ページ】 フィンケ監督のもとで花開いた才能。

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