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超新星・山田直輝が照らすニッポンの未来。
text by
小齋秀樹Hideki Kosai
photograph byTakuya Sugiyama
posted2009/06/12 11:00
キリンカップで華々しい代表デビューを果たした浦和の生え抜きは、これまでどのような足跡を残してきたのか。彼の実像に迫った。
前日にナビスコカップを戦い終えたばかりの山田直輝は、その日、オフだった。練習場からほど近い、さいたま市内の選手寮でノンビリとしていたとき、携帯電話が鳴る。
「びっくりしたというのと、嬉しいというのと、それが大きすぎて、他には何も感じませんでした」
それが、日本代表入りを聞いたときの素直な感想だったという。
一夜明けた5月22日。
「こういう座り方でいいですか?」
テレビクルーがセットした椅子に腰掛けると、山田は少し不安げに、そして、照れくさそうに、傍らで見守るクラブ広報に尋ねた。
これまでにもカメラの前に立ったことはあるが、取材者と差し向かいに座ってカメラを向けられるのは初めてだった。民放キー局の取材を立て続けにふたつこなし、それが終わると、大勢のペン記者に囲まれ、計30分近い取材に対応した。
「代表というのは目標というより夢に近いものでしたし、今でも夢のような感じです」
山田、闘莉王ら、浦和レッズの重鎮にも臆さない“少年”。
A代表の一員となっても、顔立ちはあどけないままだ。
18歳、166cm、64kg。
少年と表現してもおかしくない選手が、今、浦和レッズではリンクマンとして大きな役割を果たしている。
ジュニアユース、ユースと浦和の下部組織で育ってきた山田がトップの試合にも出場可能な二種登録をされたのは昨年4月、高校3年生のときだ。トップチームに混じって初となる練習では、当時キャプテンを務めていた山田暢久、ベテランの岡野雅行、内舘秀樹、そして田中マルクス闘莉王といった“重鎮”と同じチームでミニゲームを行なった。もちろん、コーチングスタッフの早くチームに慣れさせたいという意図あってのものだ。練習後には、次のように感想を語っていた。
「いきなり豪華なメンバーとだったんで、最初は予想以上に緊張しました。でも、闘莉王さんから『グラウンドに入ったら歳とか関係ないから、削るくらいの気持ちでやれ』って言われて、それである程度は緊張せずにやれたかなと思います」
初々しかった。学生服を着せて、彼が何者か知らない人に「中学生です」と紹介すれば、信じるだろうなと思った。