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若手だけ? あるいは主力も招集?
混迷深めるコパ・アメリカ参加の条件。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2011/04/25 10:30
ザッケローニ監督は「(コパ・アメリカへの参加は)W杯へ成長する大切なステップになる」と発言し、さらにイタリア代表との親善マッチへも動いていることも明かした
日本サッカー協会は、7月に開催されるコパ・アメリカ(アルゼンチン)への代表チーム派遣を決めた。一度は参加を断念しながらも大会を主催する南米サッカー連盟に再考を促されたことで再協議した結果、参加に踏み切ることにしたのだ。これで揺れに揺れた代表派遣問題に一応の決着はついたかに見えるが、これで話が終わったわけではない。メンバー招集について、まだ依然として多くの問題を残しているからだ。
ここまでの経緯を振り返っておこう。
1999年のパラグアイ大会以来、2度目の招待参加となる日本は当初、国内組主体のメンバー構成で臨む予定であった。というのも招待出場のコパ・アメリカにはクラブに対する選手招集の強制力がなく、欧州組を大量招集するのは難しいためだ。それが東日本大震災の影響で、Jリーグはコパ・アメリカ出場で中断期間に充てていた7月に、延期した日程を消化しなければならなくなった。Jリーグ側は選手派遣が難しい旨を日本協会に伝え、協会もチーム編成が難しくなったことで一度、辞退を決めたのだった。
欧州からも国内からも主力を呼べないダブルパンチではどうしようもならない。強化には絶好の舞台といっても十分なメンバー構成を望めない以上、協会としてはやむを得ない判断であった。
ところがホスト国、アルゼンチン協会のグロンドーナ会長から欧州組の招集に強制力を持たせるようにFIFAに働きかけるという提案を受けたことで、一転して大会への参加が見えてきた。欧州組主体で臨めるこの“逆提案”を受け、Jリーグからも「若手一人のみの招集」と「公平性を失わない」という妥協案で何とか理解を得られたのである。
W杯アジア予選を控え、欧州クラブとの関係を壊したくない日本協会。
しかし、道筋は立ったとはいえ、本当に大変になるのはこれからである。
まずもって欧州組を大量招集することは、簡単な作業ではない。いくら南米連盟の働きかけがあったとしても、だ。
メンバーの招集に強制力のあった1月のアジアカップでは欧州組をほぼ勢ぞろいさせており、年に2度も協力を求めるとなれば反発は必至である。現に日本選手を多く抱えるブンデスリーガのクラブは招集に難色を示しているとの報道もあった。FIFAのブラッター会長も欧州サイドに配慮しているのか、強制力の行使をいまだ認めてはいない。
それに7月は欧州のクラブにとって、オフシーズンながらキャンプなど土台づくりの大事な期間。喜んで主力を送るクラブはそうそうあるまい。
もちろん、FIFAの副会長も務めているグロンドーナ氏の影響力は極めて大きい。その実力者がいざ、強権を発動することになればいずれ欧州の各クラブは屈服して選手を派遣することになるだろう。だが、それでは日本と欧州のクラブとの間に軋轢を生んでしまう怖れもある。日本協会としては、南米連盟から被災した日本のための大会にしたいとの言葉を受けており、自粛ムードを破って出場する意義などを日本側から丁寧に伝えて理解を求めていくしかない。
日本協会の田嶋幸三副会長も「我々が中心となって積極的にお願いすることが大事」と南米連盟任せにしないことを明言している。コパ・アメリカ後にはW杯アジア予選が控えている。欧州の各クラブとは良好な関係を崩すことなく招集を成功させる必要がある。