スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
モウリーニョと春の逆襲計画。
~希代の勝負師が抱く2つの野望~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2011/03/28 10:30
CL準々決勝は4月5日と13日。トッテナムを順当に蹴散らせば、次は恐らくバルサとの雪辱戦だ
チャンピオンズリーグ準々決勝の組み合わせが決まった。シャフタール、トッテナム、シャルケといった黒馬同士の直接対決がないため、よほどの番狂わせが起こらないかぎり、準決勝のカードもある程度は予測がつく。
まあ、全般の予想はほかの方にお任せしよう。私が気になるのは、やはりモウリーニョの動向だ。かつてレアル・マドリーの天敵だったリヨンを一蹴したあと、彼の眼はどこに向けられているのだろうか。
などと、もったいぶることもあるまい。
モウリーニョの標的はバルサだ。
ずばりバルサだ。
しかもいまのモウリーニョは、復讐心を燃やしている。2010年11月の惨敗(0対5)は「モウリーニョ史上」最悪の事態だった。こてんぱんというより、もはやボコボコ。あそこまでバルサに打ちのめされれば、いかなモウリーニョといえども、黙って引き下がるほかなかった。
レアルとバルサの直接対決は順調に進めば、今季はあと4試合。
ただ、あのモウリーニョが巻き返しを図らないわけがない。
しかも、バルサとの直接対決は、このまま順調に進めば、今季あと4試合を残している。リーガでの第2戦(4月17日)、スペイン国王杯決勝(4月20日)、そしておそらくはチャンピオンズリーグ準決勝での2試合(4月27日と5月3日)。
準々決勝のカードを見るかぎり、両者が準決勝でぶつかる可能性はきわめて高い。バルサがシャフタールに取りこぼす事態はまず考えられないし、レアルもたぶんトッテナムをねじ伏せる形でつぎのステージへと進出するだろう。
モウリーニョの狙いは、ずばりここだ。
前人未到の偉業達成に挑むモウリーニョの大きな野望。
周知のとおり、彼は大きな野望をふたつ抱いている。
ひとつは国内リーグでのグランドスラム達成だ。チェルシーでイングランドを制し、インテルでイタリアの覇者となった彼は、当然、レアルによるスペイン制圧をもくろんでいる。サッカー史上、英、伊、西の3大リーグすべてで優勝を飾った監督はひとりもいない。
だがもうひとつ、彼には、3つの異なったクラブでのチャンピオンズリーグ優勝という野望がある。説明するまでもないが、2004年のポルト、2010年のインテルにつづいて、モウリーニョはレアルを通算10度目の王座に押し上げようとしている。もしなしとげれば、これまた前人未到の偉業だ。
今季の展開を見ると、現実性が高いのは後者というべきだろう。