オフサイド・トリップBACK NUMBER
カントナの自分探しは終わるのか?
復活したNYコスモスに渦巻く謎。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byAP/AFLO
posted2011/03/27 08:00
なぜか……3月上旬にシンガポールで行われたニューヨーク・コスモスのプレス・カンファレンス。ペレとカントナは、2014年からのチーム始動を語ったという
『エリックを探して(Looking for Eric)』という映画がある。
日本では今年のはじめに公開された作品で、マンUの伝説的選手、エリック・カントナが出演していることで話題になったものだ。
ほぼ同じ頃、カントナ絡みでは別のニュースも日本に飛び込んできた。それは彼がニューヨーク・コスモスのサッカー・ディレクターに就任するというものだった。
「ニューヨーク・コスモス」
この単語はサッカーのオールドファンにとって、特別な響きを持っている。
コスモスは、かつて1967年から84年にかけて存在したアメリカのプロサッカーリーグ(NASL)に加盟していたクラブで、ペレやベッケンバウアー等のスーパースターが所属していたことで広く知られる。NASLでは他にジョージ・ベストやヨハン・クライフを抱えるクラブもあったが、NASLのイメージリーダー的な存在になっていたのはコスモスだった。
26年ぶりに再び花開いたニューヨークのコスモス。
その後NASLは'84年に消滅し、翌年にはコスモスも解散してしまう。以降は元のGMによってクラブの名称やロゴだけが管理される形になっていた。
ところが昨年8月、コスモスは突如として再び花開く。コスモスの名称使用権等を買収していたイギリス系の合弁企業が、ペレを名誉会長に据える形で、再び一個の事業体として立ち上げたのである。この延長線上で実現したのが、カントナのサッカー・ディレクター就任だった。
クラブ関係者の鼻息はもちろん荒い。たとえばペレが、
「美しいゲームをニューヨークに取り戻すため、私たちは懸命に努力している。将来的には、ニューヨーク・コスモスがレッド・ブルズ(ニューヨークに本拠を置くクラブ。ティエリー・アンリが在籍)とチャンピオンシップで試合をするような場面を見てみたい」
と語れば、カントナも力強いコメントを寄せた。
「コスモスは非常に強く、美しく、かつ偉大な過去を持つクラブだ。私は自分たちのクラブがまずは合衆国でナンバーワンの座に再びつく、そして次には数年内に世界最高のクラブになれるための道を見出すべく、出来る限りの手助けをするつもりだ」
他にもMLSそのものの活性化や、さらなるファンベースの拡大等々、コスモス復活の謳い文句は非の打ちどころがない。