「ようやくパートナーに巡り合えた」田澤廉が語った“先輩”太田智樹との相乗効果、大八木塾の「終わらない食事」＆練習【対談アーカイブ動画90分】

涌井健策（Number編集部）

陸上

2024/02/14

2月7日に対談形式でトークライブを実施。ニューイヤー駅伝２区＆３区で襷をつないでトヨタの優勝に貢献した

「僕の場合、ずっと（練習）パートナーがいなくて、1人でやってきたんです。だから自分と一緒にやれる選手がずっと欲しかった。そこにタフそうな太田さんを見つけて……僕の方から『一緒にやりませんか』とお声がけしたんです」

　日本最高峰の長距離ランナー同士であり、今年のニューイヤー駅伝を制したトヨタ自動車のチームメイトでもある田澤廉選手と太田智樹選手をお迎えしたNumberPREMIERトークライブ。そのなかで田澤選手から冒頭のような意外な言葉が飛び出しました。

　今回の取材を打診する際に考えていた２人のつながりは、「チームメイト（でも練習拠点は東京、愛知と別々）」、「昨年11月に米国でともに合宿」、「年末の日本選手権１万ｍでともに自己ベスト」、「ニューイヤー駅伝２区・３区で襷リレー」というもの。世界を目指す高いレベルで競い合い、大八木塾でアメリカ合宿をするくらいなのだから、単なる同僚ではない、という見立てをしていました。

　ところが、当日のトークで関係を深掘りしてみれば、スイスやアメリカでも大八木弘明さんのもとで合宿をするようになった裏には、駒大の「Sチーム」で後輩たちと練習をしながらも、対等にやれるパートナーを切実に求めていたという田澤選手の思いと、それに応えた太田選手の意欲がありました。

「（鈴木）芽吹や（佐藤）圭汰、篠原（倖太朗）も一緒に練習をしているんですけど、ずっとできなくて。何回かに１回のペースでやらないと彼らが壊れてしまうんで。だから高校の時からずっと1人でやってきて、やっとタフそうな太田さんが……（笑）。だから一緒に練習をしませんか、と声をかけたんです。元々、トヨタの中ではトラックでナンバーワンでしたし、力がある選手だとはわかっていたんですけど、練習内容を聞いて、これでこれくらいのタイムを出せるんだったら、僕と一緒にもっと質の高い練習をしたら、もっと上がると僕が見ても思いました。高めあえば自分も上に行けるな、と」（田澤）

　MCが「スカウトですね！」と驚くと「そうですね、声をかけさせてもらいました」との応え。パートナーと明言された少し照れくさそうにしていた太田選手も、「（パートナーが欲しいと言う）田澤の思いと合致しました」と断言。そして一緒に練習してきた効果でこの半年の太田選手の躍進が生まれたと言います。

「練習の質はすごい上がりましたね。僕はどっちかというと、スタミナをつけつつ、スピードも上げてというアプローチだったんですけど、田澤はスピード上げて10,000mをずっと走っていた。トヨタはマラソンをやる人が多いから僕の中でアプローチも変わったし、質が上がりましたね」（太田）

　３つ学年の違う先輩と後輩でありながら「似てる」「ライバル」だと認め合う関係。大八木総監督の下での練習を巡り、こんな軽妙なやりとりにも信頼関係を感じさせてくれました。

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　太田　（大八木塾での練習は）緊張しますね。今もそうですけど、設定タイム通りいかないとって感じで気を遣いますね。お邪魔する側なんで、僕が。

　ーー田澤選手、気を遣われているらしいですよ。

　田澤　すいませんっ！（笑）　でも、設定タイムを気にしているって言ってるけど、あれっすよ、結局、守っているというか、それ以上で走っているんで。僕と似たタイプなんですよね。

　太田　いや、勝手に上げるじゃん。大八木さんが「これくらいでいい」って言っているのに、（田澤が）「それじゃ意味ない」って上げ出して。でも、大八木さんもコロコロ言うこと変わるんで。スタート直前に設定ペースが急に２秒くらい上がったり（笑）。彼は慣れてるけど、僕は困惑します。

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「フィーリングがあう」と言う２人はゲームを通じて繋がっており、東京と愛知と練習拠点は違っても、日常的に連絡を取り合っているそうです。長期合宿の必携品が「Nintendo Switch」というのも頷きあっていました。

　対談ではほかにも…

●なぜ箱根駅伝への「憧れ」がなかったのか
●ニューイヤー駅伝で優勝を確信した瞬間
●昨年12月の日本選手権前に太田選手がついた嘘（？）
●大八木塾の知られざる内幕
●塩尻選手の10,000m日本新記録に思うこと
●田澤選手の私服へのこだわり、太田選手のこだわりのなさ
●2人が息抜きにしているスイーツやお酒（田澤選手は故郷の銘酒を挙げてくれました）

など、多岐にわたるテーマについて語っています。