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「あの奇跡は偶然ではない」矢田修トレーナーが語る山本由伸の“凄さの本質”とWSで「君も『ONE OK ROCK』のTakaになれ」と声をかけた理由

2025/12/28
異例の連投劇で、日本人投手初となるWSでのMVPに輝いた右腕。加入2年目でチームの信頼を得るに至った責任感の強さと偉業の背景を、プロ入り直後から彼を支え続ける矢田修氏の言葉と共に追った。(原題:[トレーナーが語る]山本由伸「あの奇跡は偶然ではない」)

 時計の針は午後11時を回っていた。

「これはなかなか終われへんなあ」

 矢田修は、バックネット裏の家族席から、いつ終わるとも知れない攻防をのんびりと俯瞰していた。ドジャース対ブルージェイズのワールドシリーズ第3戦は延長17回に入っていた。その時だった。

「由伸君、準備始めました」

 山本由伸の園田芳大通訳からそう知らされ、椅子から飛び上がりそうになった。

「最初は『なんのこと?』と。それから初めて、『あ、山本君おった!』と気づいたんですよ」

 マウンドにはすでにこの日10人目の投手、ウィル・クラインが上がっていたが、山本の個人トレーナーを務める矢田でも、2日前の第2戦で完投し、第6戦に先発予定だった山本の登板は頭になかった。

 慌ててスタンドから降りていくと、山本はトレーニングルームで体を動かし始めていた。声をかけずに教え子の動きを注視していると、山本が矢田に気づき、言った。

「僕、行けますか?」

「献身的だとか、犠牲的精神じゃなく…」

 矢田はエースの心の内をこう慮る。

「本人は行く気やけど、いろんなことを考えたら『僕、行けるんかな?』という不安もあったと思うんです。僕は正直に、『行けるよ。行って欲しないけどな』と答えました。『でも行く気なんやろ?』と聞いたら『ハイ』と言うから、『ほんなら協力するわ』と言うしかないでしょう(苦笑)」

シャンパンファイトでは「ニッポン」「オカヤマ」コールの合唱も起こった。右は園田通訳 Yukihito Taguchi
シャンパンファイトでは「ニッポン」「オカヤマ」コールの合唱も起こった。右は園田通訳 Yukihito Taguchi

 可愛い孫のような教え子にねだられたら、「やめとけ」とは言えない。

 遠投などいつものルーティンを行う時間はなかったため、「これとこれだけやって、すぐブルペンに行こう」と伝えた。

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photograph by Nanae Suzuki

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