今回は、オリンピック代表が決まるという特別な緊張感の中で行われた全日本フィギュア、シニア男子について。表彰台に乗った選手、残念ながら実力を発揮しきれなかった選手…試合直後の囲み取材ももとに、試合を振り返り語ってもらった。
1位鍵山優真、2位佐藤駿、3位三浦佳生。全日本の表彰台には、幼少期から切磋琢磨してきた3人が乗った。特に三浦は今シーズンずっと苦しんできただけに、「ここに合わせてきたか!」という印象も大きく受けた。
「(三浦は)気力、気合が一番強かったですね。鍵山選手と佐藤選手はどちらかというと、この大会は自分の演技に集中。対して三浦選手は、五輪選考は友野選手との一騎打ち、ライバル視した上で勝つ、といった気持ちを持っていました」
フィギュアスケートは一人ひとりがそれぞれ滑るスポーツ。明確に「誰かと戦う」というわけではない…と一般的に言われている。しかし五輪代表の座を獲得するためには3位にならなければいけない状況で、三浦は「ライバル心」をうまく原動力にして戦ったと野口さんは評価する。

しかも、フリーの直前の6分間練習で三浦はジャンプをことごとく失敗。しかし演技が始まると、見事に冒頭の4回転ループ、4回転サルコウを成功させてみせた。「本当にドラマティックな星の下に生まれているなと思います。逆境からはい上がる力がすごいですよね」
三浦のことを「セオリー通りにいかないタイプ」と表現する野口さん。オリンピックでも、アドレナリンが出ている状態で、すごい演技ができてしまうタイプでは……という。「そこも含め、“選ばれるべき選手”になったということだと思います」
佐藤駿は「自分に集中」、鍵山優真は「膿出しができた」
2位の佐藤駿は、フリーでは全体トップの得点。ショートでは冒頭の4回転ルッツが3回転になり得点が伸びなかったものの、フリーではしっかりと4回転ルッツを決め、その後の流れも美しかった。
野口さんは「今回は本当に素敵だったと思います。彼は静かに自分に集中したいタイプ。『誰かに勝ちたい』というシンキングはゼロで良くて、自分に集中したときに練習通りのものが出せるんです」と評価する。今回はショートが終わった後、「4回転ルッツのことしか考えていない」と言い切ったそう。その効果と自分の演技の評価とは…。

日本のエース・鍵山優真は、フリーではジャンプのミスなどが出て、演技後号泣。野口さんも「五輪代表はほぼ決まっていて、(全日本)優勝じゃなくても選ばれる立場でした。それでも全日本となると難しかったですね」と、国際大会とはまったく異なる緊張感、プレッシャーがのしかかったと推察する。しかしここで失敗、悔しさを味わったことは、彼の今後にとってもいいことだという。
「ここでいい膿出しができたかもと思いますね。羽生結弦さん、宇野昌磨さんが引退してから『自分が背負わなきゃ』になりすぎているところはありました。彼らと同じぐらい信頼できるスケーターになりたいという思いが全面に出過ぎていました。今回の結果を咀嚼して五輪を迎えると、また成長があるのではないでしょうか」
そしてこの3人が揃って五輪に行くことは、特に鍵山にとっていい効果があると野口さん。その理由とは…。

ポッドキャストでは以下の話題でも盛り上がった。
- 三浦佳生、メンタルトレーニングのキーワードは「ごきげん」?
- 佐藤駿「ワンミスも含めて100点」の意味とは?
- ミスしても優勝、ミスしてもPCS9点台の鍵山優真
- 限界を超え続けた友野一希、未来につながるスケート
- 山本草太の“氷に吸い付くような滑り”は唯一無二
- 一人だけまったく違う宇宙にいる!中田璃士の現在地
最高峰の戦いを終えて、オリンピックまではすでに50日を切っている。今一度ポッドキャストで戦いを振り返り、余韻にも浸りたい。(12月23日収録)
※ポッドキャストをお聴きいただけるのはNumberPREMIER会員限定で、このページ下部でご視聴いただけます。
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