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【Podcast】「本当にエースだな!と」坂本花織、有終の5連覇と「フィギュアの魅力を思い出させてくれる」演技の続出《全日本フィギュア女子振り返り》

坂本花織が圧巻の演技でオリンピック即内定を決めた
 長年フィギュアスケートを取材し、選手とも信頼関係が深いライター野口美恵さんをゲストに、取材の裏話やホットなトピックをマニアックに解説してもらうポッドキャスト番組「リンクの残響」。毎月、様々な角度からフィギュアスケートを掘り下げている。
 今回は、坂本花織の5連覇で終わった全日本フィギュア女子について。坂本の強さについても語りつつ、他の選手の素晴らしい演技についても語りたい…! と、ついつい熱が入ってしまった30分弱となった。

 坂本花織は国内大会ということで非公認ながら、合計234.36点での優勝。野口さんも「この点数を出してオリンピックに行けるのは本当に素晴らしいです。やはりエースですよね。後輩たちが追い上げている中、シーズン中には2位になった試合もありました。しかし全日本でこの高得点できっちり決めてくるのが素晴らしすぎますね」と坂本の健闘をたたえた。

 終わってみれば5連覇、強かった…と捉えられがちだが、女子は特に大技が少ない分、男子よりも得点差がつきにくい傾向にある。ちょっとしたミスで順位が変わる中、3回転アクセルと4回転トゥループを武器に揃えてきた島田麻央にも6点差をつけた。

「このまま花道を飾ってほしいですね。生で見たときの滑りは格が違いすぎます。ジャンプ構成云々の前に、ほんとうに格が違うと思います」

無駄な間や動きが一つもない坂本の演技 ©️Asami Enomoto
無駄な間や動きが一つもない坂本の演技 ©️Asami Enomoto

 坂本の代名詞ともいえるダブルアクセルの飛距離、幅、安定感は野口さんも「世界一」と評価。「自分の技があることもすごいし、とにかくスピードもあるし、エッジワークもすごい。エッジを倒せる極限の角度まで倒しているんです。他の選手との滑りを比べると、体幹の強さが倍ぐらいある気がしますね」

 今回は演技構成点(PCS)のプレゼンテーションで10点満点をつけたジャッジが1名いた。これ以上ないほど完璧、それほど抜群の演技だったことが改めて証明された形となった。坂本は毎年スロースターター。シーズン当初から徐々に磨いてきた演技を、12月のこの全日本でピークに持ってこられたことも、ラストシーズンへの覚悟を感じさせるものだった。

“気合い”の千葉百音、伸びしろしかない中井亜美

 坂本の次につけたのは、17歳の島田麻央。10月30日生まれのため、今シーズンは「17歳になる年齢で、7月生まれまでの選手」というシニア・五輪出場規定には該当せず、ジュニアからの出場となった。ショート、フリーともにトリプルアクセルをしっかりと決めてきた。

「シニアに絡んだらぶっちぎりで世界選手権優勝になるのでは? とすら思ってしまいますね。世界ジュニアも優勝してくれると信じた上で、年齢制限さえなければ五輪でもメダル候補になれる才能です」

 島田の武器はなんといっても別格のジャンプ。トリプルアクセルをダブルアクセルぐらい軽々と跳び、しかもその精度が段違いだ。「3回転-3回転のコンビネーションが2つ入ってのトリプルアクセルとクワド(4回転)。さらに最後のスピンは、ここ数年プラス5しか取ったことがないというほどです。技術は本当にすごいので、曲の解釈やにじみ出てくるものが加わると、現状世界最高得点のワリエワ(272.71点)ぐらいの点数まで行くのではないかと思いますし、更新してほしいですよね」

 そして3位には千葉百音、4位には中井亜美が入り、五輪の内定を勝ち取った。千葉は今シーズン、日本勢の中で唯一、グランプリシリーズで2連勝。「五輪代表は確実」と言われる中、全日本ではかなり緊張している様子も感じ取れた。

「きっちりまとめて気合でいきました、という感じですね。オリンピック本番の方が伸びやかに演技してくれると思います」。実力どおりが出せればオリンピックでも最終グループにも入り、メダル争いにも絡める……と野口さんも太鼓判。大舞台でのさらなる飛躍に期待したい。

17歳のこの歳にオリンピックに出られることも、「運」を持っている中井 ©️Asami Enomoto
17歳のこの歳にオリンピックに出られることも、「運」を持っている中井 ©️Asami Enomoto

 中井は今季のグランプリシリーズ初戦でいきなりの優勝。今回はショートで3位となったが、フリーは緊張もあったのか最初のトリプルアクセルで転倒し、判定もダブルアクセルで点数が伸びなかった。だが野口さんは、伸びしろについては圧倒的だと評価。

「亜美さんの能力は圧倒的なので、ここからの50日で成長できる人だと思います。(フリーで)トリプルアクセル2本も入れられるし、もっと高いジャンプ構成もできるでしょう」。さらに国際大会のほうがPCSが出ていたことにも触れ、五輪の前にある四大陸選手権でいい順位を取っておけば、五輪での評価にもつながると話した。

 ポッドキャストでは以下の話題でも盛り上がった。

  • 坂本花織の滑走前に中野先生がかけた言葉とは?
  • 中井亜美が五輪で活躍できる大きな要素の1つは「運」
  • フリーの演技が圧巻!青木祐奈の素晴らしさ
  • 渡辺倫果の「生き様」と演技後半の課題
  • 樋口新葉が「フィギュアの魅力とは何か」を教えてくれる

 このシーズンをラストと定めている選手も多く、心打たれる演技が続出した全日本女子。ここからシーズン後半、運命の五輪へと向かっていく。今一度戦いを振り返るPodcastとともに、余韻を思い出してほしい。(12月23日収録)

※ポッドキャストをお聴きいただけるのはNumberPREMIER会員限定で、このページ下部でご視聴いただけます。

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photograph by Asami Enomoto

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