「前回の箱根、今回の全日本、全く駅伝ができていないんですよね。それに対して、僕もなんでかなっていう疑問が強くなっていたんです」
大東文化大学・真名子圭は、直近の駅伝を振り返ってこう話し始めた。

仙台育英高校から母校・大東文化大学に戻って4年目。監督就任初年度に全日本大学駅伝、箱根駅伝ともに返り咲き出場を果たすと、2年目に全日本、箱根ともにシード権を獲得、3年目は三大駅伝すべてに出場と、真名子はチームを文字通り復活させてきた。だが、昨年度は全日本11位、箱根に至っては19位でシード権を逃し、11月の全日本は13位に終わっている。
3年間、三大駅伝から遠ざかっていたことを考えれば順調に結果を残してきたと言えるが、就任当初の勢いが感じられないのも事実だ。強くなっているのに、勝負では勝てない。チームにはある種の停滞感が漂い始めていた。
「今思うのは、箱根駅伝でも全日本でも、予選会って単独走と言っても周りに大体同じレベルでいく選手がいるので、単独走という名の集団走なんです。うちは集団練習ばかりやっているので、その練習をしていたら予選会は走れるんです。でも、単独でやる練習を僕はまったくやらせていなかった。ポイント練習は1回もやらせてないんじゃないかな。そこがうちの駅伝の弱点だとすごく感じています」
11月2日の全日本大学駅伝。1区には故障明けのルーキー・菅﨑大翔を起用し20位(区間21位)でスタートすると、2区・棟方一楽(3年)、3区・大濱逞真(2年)と並べた主力選手でもチームを13位までしか上げられず、最終的に13位に終わった。区間順位も4区を走った中澤真大(2年)の9位が最高で、“ゲームチェンジャー”的存在も出てこなかった。
本戦で結果を出せないことにフラストレーションを抱えているのは真名子だけではない。レース後、学生たちからも変化を求める声が上がった。
「全日本の日に帰りの電車とかホテルの食事会場とかで、一人ひとりと話したんです。その時、中澤真大が『集団走は大事だと思うんですけど、後半の数kmを各自にして、それぞれ考えさせてやらせるのがいいんじゃないかと思います』と言ってきました」
“変化”に関して、真名子はこうも口にした。
「学生の頃、僕は指導者に対しても生意気なことを言っていました。でも、今の学生は僕に生意気なことは言ってこないんです。冗談でもいいから、もっと言えるようになった方がいいんじゃないかなって。言えないのは僕が圧力をかけちゃっている部分が大きいのかなと、今、自分の中では変えなきゃいけないと思う部分ですね。軍隊式の指導をしていればある程度足並みが揃って強くなると思うんですけど、スーパースターは出てこないじゃないですか」
練習のあり方、“ゲームチェンジャー”になりえる存在の育成――。動画インタビューでは、考え方が変わった過程、さらに期待を寄せ“エース”と呼ぶ棟方、大濱ら主力選手の現在地と潜在能力についても語っている。

今季のチームスローガンは『歴史への礎~あの場所でやり返す~』。この言葉を誰よりも体現しているのが4年生だ。
彼らは真名子が監督に就任するタイミングで入ってきた世代だ。言わば“スカウトの谷間”であり、Aチームにいたのは11月中旬の時点で入濵輝大だけ。12月10日のエントリーには「グッと調子を上げてきた」と4名が名前を連ねたが、これまでの三大駅伝出走も入濵しかいない。それでもこの学年は横のつながりが強く、結束は固いという。
「入濵以外は箱根駅伝を走れないかもしれない。でも、来年、再来年のチームが上に行くために、自分たちが礎になりたい、と彼らは言ってきてくれた。4年生がある意味犠牲になるのを覚悟でやってくれているからこそ、僕は2年後、3年後を見据えてやってかなきゃいけないと思っているんです」
真名子は、自らの今があるのは「大東文化大学での4年間のおかげ」だと話す。指導の根底には母校への揺るぎない愛がある。大東文化という同じ場所で育ち、同じものを背負っているからこそ、仲間を超えて“ファミリー”になる。歴史をつなぐことを選んだ4年生が見せるこの覚悟がチームの象徴だ。

真名子が主力選手になる存在として期待を寄せる1年生に菅﨑大翔がいる。菅﨑は年齢で言えば今2年生の代、つまり1年遅れて入学をしているわけだ。聞けば、社会人経験を経ての入学だそう。異色の経歴や入学の経緯、そのほか動画インタビューでは以下のことに触れている。
- 「トヨタを辞めて…」菅崎大翔の異色の経歴とは?
- 箱根駅伝予選会の8位は「完全に僕の失敗」
- 大濱逞真は「調整力、集中力、感性はチームNo.1」
- 入濵輝大と4年生の絆「自分たちが礎になりたい」
- 赤星龍舞選手のキャプテンシー
- 「言葉にして伝えることは大事」真名子流“言葉の力”
- 「軍隊式指導ではスーパースターが出てこない」
- “エース”棟方一楽は「2区です」
- 月に1度のお楽しみは“誕生会”「ベロベロになって…」
- 留学生エヴァンス・キプロップ(2年)の状態は?
まっすぐな言葉で語られる真名子監督のインタビュー。ぜひ動画でご覧ください。(11月19日取材)
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