
オリックス所沢遠征先のホテルの一室。先に到着したカズがイチローを待つ。
午後9時半、選手会の壮行会を終えて、キャップを被ったイチローが姿を現した。
「遅れてすみません」、イチローが頭を下げる。
「カズです」。差し出された右手をイチローが握り返した。
「いつも見てるよ」と、カズが笑いかけると、
緊張気味だったイチローの肩の力がスッと抜けた。
カズとイチロー。この日、初めて顔を合わせた。日本の二大プロスポーツを代表するトッププレイヤー。二人の話に、じっくりと耳を傾けていただきたい。
そこには、野球とサッカーというジャンルを越えたトッププレイヤーでなくては語り得ない、そしてトッププレイヤーでなくては理解し得ないであろう、充実感と、自負と、苦しみと、次の世紀に向けて背負った責任があった。
「選手って一流になればなるほど本当に繊細なんだ」
時計の針は、すでに12時を回ろうとしていた。
イチロー「すごい勇気のある人だなとずっと思っていた」
──イチロー選手は、今年で23歳?
イチロー はい。プロ入り5年目です。
カズ 23歳というと、僕はちょうどブラジルから帰ってきた年ですね。'90年でした。
イチロー 戻ってこられたのは'90年だったんですか。'90年! 高校生でした。高校2年生。
カズ 夏でしたよ、帰って来たのは。
イチロー 僕は甲子園に出ていました。1回戦で負けちゃって。
──カズさんにとって、いつ頃からですか、「イチローが光っている」と思えたのは。
カズ 僕がちょうどイタリアに行っていた時なんですよ、200本安打を打った年は。だから、あまり知らなかった。
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