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「僕も“ストラックアウト”をやってました」松坂大輔が明かす“監督激怒”と杉内擁する鹿実戦秘話~連載「怪物秘録」第17回~

2024/02/09
調子が上がらないまま迎えるかに思われた鹿実戦。直前の第2試合の途中、練習中に思いがけない感覚をつかむ。果たして松坂に何が起こったのか。

 2回戦で鹿児島実を下した横浜。甲子園の初戦でノーヒットノーランを達成した杉内俊哉を攻略して、6-0の完勝だった。東神奈川大会から調子が上がらないままだった松坂大輔はなぜこの日、無四球完封という完璧なピッチングができたのだろう。

◆◆◆

 もちろん、スギ(杉内)のピッチングに引っ張られたところはあったと思います。あの夏で言えばスギとか(新垣)渚とか、いいピッチャーと投げ合うのをすごく楽しみにしていました。沖縄水産とは甲子園で対戦できなかったんですが、スギと投げ合った試合はフォアボールもデッドボールもゼロだったんです。いやぁ、我ながら素晴らしい。あれはレアでしたね(笑)。

 1回戦の柳ヶ浦との試合が終わって、中4日という間隔がちょうどよかったのかもしれません。ただ、その間もよくない状態は続いていたんです。ところが試合当日、意外なことがきっかけとなって調子が突然、上向きました。鹿実との2回戦は第3試合で、その前の第2試合が延長戦に突入します。豊田大谷と宇部商の試合でしたが、かなり長くなって(延長15回、宇部商の2年生エース、藤田修平のサヨナラボークで決着、試合時間3時間52分)、僕らはずっと室内練習場で待っていました。

 延長の間に何度か、ピッチングに近いキャッチボールをしました。相手はたぶん(小山)良男じゃなくて、ブルペンキャッチャーの(浦田)松吉です。彼はメンバーとしてはベンチに入っていませんでしたが、試合前のノックの手伝いなどをしていたので、あのときの室内にもいてくれたんじゃなかったかなぁ。あまりにも自分の調子が上がらないので松吉に頼んで、何度も何度もキャッチボールを繰り返していました。延長が決着する直前、立ち投げだったか、松吉が座っていたのかは覚えていないんですが、急に何かが変わった気がしたんです。

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photograph by Kiichi Matsumoto
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