不謹慎だ。でもラグビー愛好者はつい口にした。してしまった。
「もう少し早かったらと思うと」
いまでも素直にキーボードを打つのがためらわれる「コ」で始まり「ロ」がはさまって「ナ」で終わるアレ。あの病が日本でのワールドカップを襲っていたなら。
ここで一拍あいて。
「ゾッとする」
4年前の秋。季節外れの桜が咲いた。アイルランドとスコットランドを退けて堂々の準々決勝へ。見ておもしろいのに弱くない。いや強くておもしろかった。
「ワンチーム」の標語はミーティング部屋を飛び出し、世間に称えられる。大会を終えて、長谷川慎コーチがそのへんの道を歩くと、見知らぬ通行人が「あっ、スクラムの人」と言った。
さあ、年が明けて、ラグビーの隆盛がやってくる。はずだった。
2020年1月15日。国内初の感染者は確認される。4日前が全国大学選手権ファイナル、いまフランスにいる齋藤直人主将の早稲田が11季ぶりの優勝を遂げた。
同12日開幕のトップリーグはよく観客を集めるも無念、3月には止まる。
ジャパン強化を支えたサンウルブズはすでにスーパーラグビーからの「除外」を告げられていた。最後のシーズン、感染拡大で渡航もままならず、サヨナラの手をふる機会もろくにないままに消えた。
ほどなく「不織布」は日常語となる。
大躍進の翌年、ジャパンの活動は許されなかった。フランス大会で同組のイングランドはその'20年、伝統の6ネーションズ(一部は延期)に加えて秋のシリーズもこなした。テストマッチ数は0対9。以上の事実だけで現在地を楽観はできない。
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photograph by Kiichi Matsumoto