#1080
巻頭特集

記事を
ブックマークする

<2021年ライオンズ戦の「安堵」>ジャパンに世界の舞台に立つ資格はあるのか?【ライター藤島大のエッセイ】

2023/09/07

 不謹慎だ。でもラグビー愛好者はつい口にした。してしまった。

「もう少し早かったらと思うと」

 いまでも素直にキーボードを打つのがためらわれる「コ」で始まり「ロ」がはさまって「ナ」で終わるアレ。あの病が日本でのワールドカップを襲っていたなら。

 ここで一拍あいて。

「ゾッとする」

 4年前の秋。季節外れの桜が咲いた。アイルランドとスコットランドを退けて堂々の準々決勝へ。見ておもしろいのに弱くない。いや強くておもしろかった。

「ワンチーム」の標語はミーティング部屋を飛び出し、世間に称えられる。大会を終えて、長谷川慎コーチがそのへんの道を歩くと、見知らぬ通行人が「あっ、スクラムの人」と言った。

 さあ、年が明けて、ラグビーの隆盛がやってくる。はずだった。

 2020年1月15日。国内初の感染者は確認される。4日前が全国大学選手権ファイナル、いまフランスにいる齋藤直人主将の早稲田が11季ぶりの優勝を遂げた。

 同12日開幕のトップリーグはよく観客を集めるも無念、3月には止まる。

 ジャパン強化を支えたサンウルブズはすでにスーパーラグビーからの「除外」を告げられていた。最後のシーズン、感染拡大で渡航もままならず、サヨナラの手をふる機会もろくにないままに消えた。

 ほどなく「不織布」は日常語となる。

 大躍進の翌年、ジャパンの活動は許されなかった。フランス大会で同組のイングランドはその'20年、伝統の6ネーションズ(一部は延期)に加えて秋のシリーズもこなした。テストマッチ数は0対9。以上の事実だけで現在地を楽観はできない。

特製トートバッグ付き!

「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています

photograph by Kiichi Matsumoto

0

0

0

前記事 次記事