微々たる前進ながら、世界のラグビーは歩み始めた。ニュージーランド対オーストラリアの定期戦は再開。やがて各国代表も始動する。世界的名将の慧眼に、このスポーツの未来はどう映っているのだろうか。(初出:Number1013号エディー・ジョーンズ「アフター・コロナのラグビーを語ろう」~名将の未来予測~)
――2020年は何から何まで、異例の年になりました。3月にシックスネーションズが中断となって、ようやく残りの試合が10月24日から再開します。コーチはどんな時間を過ごしていましたか。
エディー・ジョーンズ(EJ) 7月までは日本にいました。本来ならばイングランド代表の強化に携わる時間が、まるまる自由なものになりました。私としてはまとまった学習時間が取れたのがありがたかった。
――いつも勉強してらっしゃいますけど。
EJ まとまった時間が大切なのです。知識や情報を体系化できますからね。
――どんな新しい知識、情報を蓄えられたのですか。
EJ 選手選考、人事評価など、人間に関わる要素です。他競技の情報を仕入れ、それをラグビーにどう生かせるかを考えていました。たとえば、2016年にMLBのワールドシリーズを制したシカゴ・カブスについて書かれた『The Cubs Way』は興味深かったですね。カブスはデータを中心とした『マネーボール』時代から発想を進化させ、データと直感、それにヒューマンスキル、人間関係を組み合わせたアプローチでチームを作り、108年ぶりに頂点に立ちました。マネジメントに関わる人間の必読書といえるでしょう。
――たしかにメジャーリーグは科学とスポーツの融合が急速に進んでいます。
EJ サッカーのプレミアリーグも競争が激しいので、アイデアの宝庫ですよ。実はこの後、昨季の王者リバプールのアナリストとミーティングをするのです。
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