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「実に柔らかい筋肉でね。弾力が…」「PLがガンガン打ってきた」松坂大輔、甲子園“伝説の3試合”を裁いて【球審2人の告白】

上から投げ込まれた硬く丸い物体が、いよいよ捕手のミットの直前で浮き上がる。
あらゆる「好投手列伝」において欠かせぬ記述である。いったい物理の法則ではありえるのか。それとも、ただの錯覚なのだろうか。
「こんなボールがストライクになるの?」
アマチュア野球の元審判員、清水幹裕が、冷房のよく効いた東京都内のオフィスで、当時の驚きを軽妙な調子で再現した。東京大学野球部出身、文部省(当時)のキャリア官僚を経て司法試験に合格、弁護士業務のかたわら、東京六大学を母体に甲子園などの審判を長く務めた。真実への肉薄を職責とする人物は、あの夏の松坂大輔の投球を続けて解説してくれる。
「審判ってね、ボールが半分くらいまできたら、だいたい、これ低いなって分かるんですよ。まあ100人に99人はそのままボール。でも100人にひとり、そこからストライクになるピッチャーがいるんだよね。松坂君の球は絶対に低めのボールだと思うのにストライクになる。あれ、何なんだろうね」
1998年8月21日の甲子園、横浜と明徳義塾がぶつかる準決勝の球審を担当した。
試合前、ダグアウト裏のスペースで部長とキャプテンとの短いミーティングを行なう。そこへ松坂大輔が右腕のテーピングの許可をもらいにやってきた。その前日、横浜のエース松坂は、PL学園と当たり「延長17回、250球」を単身で投げきっている。9─7。いまだ語り継がれる名勝負だ。
清水球審は声をかけた。
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