WBCの名場面を彩った、同学年の捕手と遊撃手。出身地を共にする二人は、別々の道を歩みながら、時に交錯する。甲子園の夢は叶わなかった両者に、高校時代から現在に至る道程を尋ねた。
甲斐拓也が投じた鋭い二塁送球は、ベース手前でバウンドした。遊撃手の源田壮亮が巧みにすくい上げ、必死に身をよじるアラン・トレホにタッチする――。
3月20日、WBC準決勝・メキシコ戦の7回表の出来事だった。劣勢だった日本の潮目が変わったワンプレーは「源田の1ミリ」と呼ばれた。
この場面を演出した甲斐と源田は、大分県出身の同期生である。彼らに「高校時代に自分が侍ジャパンのユニホームを着ることはイメージできましたか?」と聞くと、それぞれこんな答えが返ってきた。
「ありえないですね。とてもじゃないけど、想像つきませんでした」(甲斐)
「正直言って、ここまでいくとは思っていませんでした」(源田)
ともに甲子園は未経験。世界など夢のまた夢の「非エリート」だった。
源田が初めて甲斐を認識したのは、中学時代のこと。同じ中学校に大分シニアに所属した元巨人の田中太一がおり、甲斐の話を聞いていたのだ。プレーヤーとしては、高校に入ってから初めて見たという。
「とにかく『打てるキャッチャー』というイメージ。『打つ人』という認識でした」
一方の甲斐は、高校入学後に初めて源田の存在を知った。
「守備が堅実なイメージがありました。バッターとしても嫌らしさがありましたね」
近しい関係ではなかった甲斐と源田をつなぐ、カギとなる人物がいる。中学時代は大分シニアで甲斐と、大分商では源田とチームメートだった溝辺大士郎、坂本憲英の二人だ。溝辺は中学時代に二塁手だった甲斐と、高校では源田と二遊間を組んでいる。
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photograph by Wataru Sato