#1076
SCORE CARD INTERVIEW

「動きが縮こまっていた」体操エース・橋本大輝は“腰の疲労骨折”をどう乗り越えたか?<身体操作は内村航平の領域へ>

 パリ五輪まであと1年。'21年東京五輪で金メダル2、銀メダル1を獲得した体操男子のエース・橋本大輝(順天堂大)が、個人総合の連覇と団体総合の金メダル奪取を目指し、さまざまな試練を乗り越えながら強さの幅を広げている。

 今年は1月に腰の疲労骨折が発覚するまさかのスタートだった。約2カ月間にわたって、種目によってはほとんど練習をできない日々が続くピンチ。4月の全日本個人総合選手権と5月のNHK杯でそれぞれ3連覇を達成し、世界チャンピオンの矜持を示したが、道のりは険しかった。

 特に厳しい戦いを強いられたのは4月だ。骨折による練習不足に加えて試合の2日前に右足首を捻挫し、予選2位と出遅れた。取材陣に「何度も逆転勝ちを経験しているので、そのメンタルを使って自分で優勝を引き寄せたい」と決意を述べた時の表情は硬く、ギリギリの状態であることが伝わった。だが、2日後の決勝で修正ポイントの多くを改善していた様子はさすが。終わってみれば有言実行の逆転優勝だった。

 1カ月後のNHK杯では驚異的な“芸当”を披露した。5種目を終えてトップで迎えた最終種目の鉄棒。演技直前に「上半身が全部つる」というアクシデントに見舞われた橋本が試みたのは、離れ技の際につってしまっていた親指を使わず、他の指でバーをつかむというアドリブだ。

「普段はキャッチの時に親指でつかむんですけど、今日は4本の指を引っ掛けました」

 綱渡りの優勝に安堵の表情を浮かべた橋本だが、状況説明を聞いた者たちは目をまるくするばかり。水鳥寿思男子強化本部長は、「つっていると、握り替えの時にも指を当ててしまい、落下することもある。凄いことだ」と驚きを隠せなかった。思い起こせば歴代の体操界には内村航平や白井健三といった身体を操る名手たちがおり、時に彼らはケガや試合中の異変に対して信じがたい“代替案”を繰り出し、涼しい顔で演技を完遂していた。橋本がその領域に入っているのは間違いないだろう。

 とっさに出せる高度な技術の他にも、橋本を力づけていたことがある。手首を痛めた状態でライバルの中国選手に競り勝って優勝した昨年11月の世界選手権での経験だ。

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